「前科者」というと殺人や強盗を犯した犯罪者というイメージが強い。だが実際は、交通事故など、ほんの少しの過ちで図らずも前科者となる可能性もある。一度、塀の中に入ってしまえば、再就職はもちろん、住むところを探すことすら難しい。『前科者経営者』(プレジデント社)の著者、高山敦氏は、意図せず罪を犯し約5年の刑務所生活を送った元経営者だ。高山氏が「どんな人間であっても、きっとやり直せる」と語る理由とは――。

※本稿は、高山敦『前科者経営者』(プレジデント社)の一部を再構成したものです。

犯罪と気づかずに詐欺をしていた

私は1986年、27歳で不動産業で起業して以来20年間順調に事業を続けてきました。折しもバブル景気のまっただ中、不動産売買が次々とうまくいき、同業者からは「営業の天才だね」と言われるほど好調でした。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/high-number)

ところが、バブル経済が終焉を迎えるとともに事業規模は縮小。下がる売上を何とかせねばと思い、未知のIT業界に手を出しました。韓国で開発された会議用インターネット・カメラ・サーバーシステムの独占販売権を取らないかという誘いがきたのです。代金は1億円。その資金を集めるため、FXの営業を始めました。

もともと営業センスがあっただけに、次々と契約は決まりました。そうして、「法に触れない」という確証を持たないまま突き進んだ結果、2005年12月7日、「出資法違反」で逮捕されてしまったのです。

逮捕されて初めて、自分がやっていたことは犯罪だったと知りました。まったくの初犯でしたが、判決は5年の実刑。意図して犯した犯罪ではありませんでしたが、大きく損害を受けた人がいる以上、判決を受け入れ、控訴はしませんでした。

出所までの約5年間を耐えられた理由

絶対に来てはいけないところ、それが刑務所でした。囚人服を着たその瞬間から、私は私ではなくなり、それまでの人生をすべて失いました。犯罪とは無縁の生き方をして来たはずなのに、「ワル」「犯罪者」「囚人」となりました。

厳しい刑務所内での生活に自分は人間としてダメなんだ、罪を犯した自分はもう人としては扱ってもらえないんだと思わずにはいられませんでした。刑務所に来てしまったのは自分が罪を犯してしまったからであり、誰かを責めることはできません。刑務官に罵倒され、人間性もそれまでの人生もすべて否定される日々が続きました。

出所までの約5年間をどうやって耐え抜くことができたのか。ひとつは家族です。毎月差し入れと手紙を送ってくれ励ましてくれる妻と「5年は長いけれど、大学に入ったと思って勉強する気持ちで頑張って」と励ましてくれる娘の存在がありました。

自分を待っていてくれる人がいるという事実はなんと心強いことか。自分の至らなさから迷惑をかけてしまった多くの人たちのためにも、頑張って一日も早く刑務所を出よう。そのためにも強くなろうと思ったのです。

『前科者経営者』出版記念講演会を開催!
11月10日14時より『前科者経営者』の著者、高山敦さんの出版記念公演会をプレジデント社セミナー室にて開催。(定員80名) 申し込み詳細はこちらからお願いします。