元受刑者の厳しい就労状況

受刑者が再犯に陥る構図はおおよそ決まっています。出所しても頼れる家族のいない人や一時的にでも身を寄せられる場所がない場合、まず住む場所が必要ですが、家を借りるためにはある程度のまとまった資金がいる。そして何より毎月家賃を払える定職がないことにはどこも貸してはくれない。一方、履歴書を書くにしても住所がないと書くことができない。当然、仕事にも就けない。結果、住まいや仕事などのために昔の悪い仲間を頼るようになり、再び犯罪に手を染めるようになる。負のスパイラルに陥ってしまうのです。

高山敦『前科者経営者』(プレジデント社)

また、小さいころから悪い仲間とつるみ、悪いことばかりをしてきた人は、一般常識がわからない。だから、運よく就職しても常識がわからないため叱責され、反抗してすぐにドロップアウトしてしまう。物事の解決策は、ケンカか逃げることしかないと思っている人が多い。友達もワルばかりだと、助けを求める先もないのが現状です。

さらには、どんな犯罪かも知らずに、「前科者」というレッテルを貼られ十把ひとからげに見られてしまうことも復活を妨げる大きな要因です。たいていの前科者は(本来はいけないことですが)経歴書の必罰欄に前科を記入しません。そのため、仕事ができるから契約から社員へしましょうという話があっても身上調査でその前科が発覚し、ご破算になってしまいます。

かといって、前科を書いては仕事に就けません。自らが犯した罪を償い改心して、いちから人生をやり直そうにも現実はその機会さえ与えられないのです。このため受刑者の再犯率は4割にものぼります。長年保護司をされてきた先生はこの悪の連鎖をなんとかしたい、再犯をなくしたいという思いからヒューマン・ハーバー設立に力を貸してくれたのです。

自分の限界を超える力を信じる

おかげさまで、ヒューマン・ハーバーの設立から3年間で支援した服役者の再犯率はゼロであり、その取り組みは着実に実を結んでいます。社会起業として、ユヌス・ソーシャルビジネスカンパニーの日本第一号認定を受け、また日本財団の職親プロジェクトの企業にもなりました。

だまされて詐欺に加担してしまい、刑務所に。4年7カ月の刑務所生活を終え、51歳で出所して初めて本当の自分に気づき、「人生をやり直そう。人のためになることをしよう」と思い立ちました。あの地獄のようなどん底の日々から、私は51歳でやり直すことができました。

どんな人間であっても、きっとやり直せる。そう信じています。

高山 敦(たかやま あつし)
高校卒業後、税理士事務所に勤務した後、27歳で起業。ITバブルを見て「自分も億万長者に! 」とIT関連事業に進出するために資金を集めるために始めた事業で詐欺に加担。 4年7か月の刑務所生活を送る。刑務所で人生を見直し、社会のためになることをやろうと決意。出所後、保護司とともに受刑者の社会復帰を目的とした会社を立ち上げた後、現在は、独立して元受刑者の就労支援や自身の体験をもとにした講演活動などを行っている。
(写真=iStock.com 構成=館山菜穂子)
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