日本企業はかつてロスジェネの採用を渋ったせいで、現在、中堅世代の人材不足が深刻化している。特に30代以下は収入格差を痛感して「生まれた時代が違うだけで……」と考えてしまうだろう。『モチベーション3.0』などで、時代に先駆けて「10年後の現実」を書いてきたダニエル・ピンクは、最新刊『When 完璧なタイミングを科学する』(講談社)で時間生物学の知見からその疑問に答えている。訳者の勝間和代氏が「タイミング」の重要性を解説する――。
大切なのは「何をするか」より「いつやるか」
林修さんの「いつやるか? 今でしょ!」がブームになったのはもう5年前ですが、まさしく、私たちはいつでも
「いつ何をやるか」
という決断に迫られ続けています。
いつ結婚すればいいのか、いつ転職すればいいのか、いつ家を買えばいいのか、いつパソコンやスマホを買い換えればいいのか、いつ重要な決断をすればいいのか、いつトレーニングをすればいいのか、まさしく、日々の生活が「いつ○○すればいいのか」の連続です。
それにもかかわらず、世の中の多くの指南本は「何をすればいいのか」ということについて、常に私たちに指摘をしてきましたが、「いつ」すればいいのかということについてはほとんどノウハウを提供してくれていません。
ある意味、私たちの行動に対するさまざまなアドバイスというのは「何をすべき」という50%の要素しか捕捉してないということになります。しかし、ここでいつすべきという残る50%の要素が入れば、ぐっと私たちの人生の決断は正確になるし、簡単になるのです。
生涯年収は就職の「タイミング」で決まる
イエール大学経営大学院のリサ・カーン教授の研究によれば、就職時期に不況か、好況かでなんと自分たちの生涯の年収が決まってしまうということも分かりました。
この「いつ就職するのか」というタイミングの影響が、生涯にわたる不公平をもたらす可能性があるのです。
また、私たちは中年期になると幸福度が下がり中だるみになりますが、これは生涯にわたって中間地点がたるむのと同じように、もっと短いスパンのさまざまなプロジェクトや試合も中間の辺りはだいたいみんなたるんでいます。
この中間時点のモチベーションをいかに高めるかということも、タイミングの科学としては考えなければいけないのです。