まさにこの精神こそがモンロー主義に繋がり、本人の自覚がどれほどあるかは知りませんが、トランプ大統領まで受け継がれているということです。むしろ近年の世界の紛争解決に乗り出していた大統領たちのほうが、伝統的なアメリカ大統領の立場からは逸脱していたのであり、トランプ大統領は原点に立ち戻ったともいえるわけです。一定数のアメリカ国民から支持されるのも、こういった背景を鑑みるとうなずけます。
事前知識や先入観だけで物事を判断するのも危険
――理解しているつもりの知識も、原典に当たると意外な事実が発見できるということでしょうか。
そうです。いまはニュースやネットで聞きかじった情報を孫引きで皆語りがちですよね。ウィキペディアという便利なものもありますし。
でも、自分自身が曖昧なまま語ったり、どこかひっかかるところがあるのに放っておいたりしたことって、必ずどこかでしっぺ返しが待っているんですよね。事実を見誤ったり、本質を見損なったりする。私はちょっとでも気になったことは用語辞典や人名辞典で調べ、それでも納得できない場合は、現地に飛んで自分の目で確かめるようになりました。
また、そうやって本で学んだ知識も大切なのですが、一方で事前知識や先入観だけで物事を判断するのも危険だと思うんです。実際に、私も現地取材にあたり、事前の予想がことごとく裏切られることはしょっちゅうです。先入観が邪魔して、現地の人と話がかみ合わないこともあります。
だから最近は、取材先をあえて決めずに現地入りすることも多いんです。あらかじめ「知りたい情報をとれる人」を押さえて渡航すると、本当のその国の事情や日常生活、人々の感情までたどり着けない気がするからです。
ならばいっそ、現地で突撃取材をしたほうがいい。本著に登場するドイツ人男性も、そうやってたまたま現地で知り合い、話を聴けた一人なんです。
――世界史的知識と、現地の声を聴く耳、両方必要だということですね。
ニュースをわかりやすく解説する方は、私以外にもいらっしゃると思います。むしろ私はそういったニュースの行間を埋めていく作業をしたいと思っているんです。
以前、社会科の教師だったころも、教科書を直接使うことはせず、自分でプリントをつくり授業を進めていました。どういう切り口なら、歴史やニュースに興味のない若者でも関心を持ってもらえるか、そういうことばかり考えていましたが、結果的に自分自身の勉強に繋がった気がしています。