マニュアル通りに歴史を学ぶ必要はない

――世界史を学びなおすときには、何に気をつければいいでしょうか。

世界史に対して苦手意識を持つ人は、受験勉強で膨大な人名や年号に苦労したのではないでしょうか。実は私も特に世界史が得意だったわけではないんです。

大学での専攻は古代日本史で、社会科教員として子どもたちに教える側になって初めて、本格的に世界史に取り組みました。その経験を振り返ると、あまり「正解な学び方」に囚われないほうがいいかなとは思います。

特にビジネスパーソンは、マニュアル通りに歴史を学ばなきゃと思っていらっしゃる方も多いと思うんです。でも大人が学びなおす際に、わざわざ古代ギリシャ・ローマ時代から始める必要もありません。まずは自分の好きなジャンルや興味のあることから掘り下げていくのはいかがでしょうか。

例えばカレーが好きなら、インドのカレーがどのように世界中に広まったのか、使われている香辛料がどのようなルートで海を渡っていったかなど、カレーを切り口に壮大な世界史を学ぶことができます。

――書籍では「世界史の教科書の選び方」についても解説されています。大人の学びなおしで高校教科書を使うときには、情報量の多い「世界史B」より、図版や写真の多い「世界史A」のほうがいいというのは意外でした。ほかにポイントはありますか。

私がおすすめしているのは、児童用に書かれた歴史の本なんです。岩波ジュニア新書や、歴史を絵本で解説した海外の本なども侮れません。

以前、古代エジプトのミイラづくりの詳細を知りたいと調べたときも一番役立ったのは、ミイラについて解説された絵本でした。ちなみにヘロドトスの『歴史』によるとミイラづくりにも松竹梅のランクがあるそうです。金持ちはお金をかけてミイラにしてもらえるけど、貧乏人はほぼ放っておかれるなど。いずれにせよ乾燥地帯なので、放っておいてもミイラになるんですが(笑)。

歴史の学び方に正解はなく、どんな切り口でもいいと思うんです。ただ、どんな方法でも、学べば必ず得るところがあるのが歴史の醍醐味です。自分なりの勉強法を探ってみるのも面白いのではないでしょうか。

増田ユリヤ
ジャーナリスト
国學院大學卒業。27年にわたり高校で社会科を教えながら、NHKのリポーターを務めた。世界各地を精力的に取材している。
(三浦 愛美=文 原 貴彦=撮影)
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