役員ヘの分岐点 3
課長になったら、ふんぞり返っていないか?

――部下に対する接し方や上司への対応も出世のうえでは大事です。ところが課長になったとたんにお山の大将になってしまう人もいますね。

【IT】結構いますね。そういう人はそこで終わりでしょう。なぜならそこでふんぞり返っていたら次のお山には登れませんし、絶対に役員にはなれない。お山の大将になるとその場所以外に視野が広がらなくなり、今のポジション以上の発想も出ないし、勉強もしなくなる。

【流通】課長に限らず、上に上がる際に注意しないといけないのは、自分に対する部下からのフィードバックの量が減っていくことです。担当者レベルだといろんな人からフィードバックしてもらえるが、課長、部長と偉くなると減っていく。人間は悪い点を含めて言ってもらわないと成長しないもの。言ってもらえるには、謙虚さやオープンマインドの姿勢が大事だが、それがないためにお山の大将になってしまうのです。

【メディカル】そう。リーダーシップという点ではトップダウンも大事だが、僕としては周囲にいろんな意見を言わせて皆の英知を汲み取り、最後に全責任を持って決断する柔軟な上司が望ましいと思っている。なぜなら業界のすべてのことを理解することは無理だし、地に足が着いた判断はできない。トップダウンだけだと逆に危うい。柔軟に皆が走る方向を変えられる人ほど役員になる確率が高い。

【金融】課長ぐらいまでは自分にも厳しく、その厳しさを部下に押し付ける鬼軍曹タイプが結構評価される。今は厳しいことを言う人はあまりいませんから。しかし、その上になると、厳しいだけではダメ。部下に優しく接するぐらいの懐の深い人が出世している。もちろん表面的に懐が深いだけであって、実質は厳しい人がほとんどですが。

【IT】部下の手柄を奪ったり、犠牲にする人は部下からの人望は得られないし、今の時代は通用しない。部下に対して自分の感情を剥き出しにして叱る人もダメですね。相手は防御するだけで心に響くことはない。こういうタイプは役員に向いてはいない。

【メディカル】上に対して忠義一筋で、社長の言うとおりにやって役員に上げてもらった人もいる。でも本来はそれではダメ。経理の部長であれば、社長が何と言おうが、こういう方針でいくという信念がある人がいい仕事をするのは確かです。むしろ上司をマネジメントすることができる人は上に上がりやすい。上司に好かれることはもちろん大事だが、必要なときに意見できるようにしないと上司が方向を誤ることもある。

【メーカー】そう。全部がイエスマンばかりになったら会社自体が危うくなってしまいます。ものが言えないときも正直言ってありますが、言い方は気をつけながら、誠実さを持って言うべきところはうまく伝える努力はしています。