役員ヘの分岐点 4
セクハラ、パワハラ、カネ。どこまで自制できるか?
――大変な事態が発生したときに逃げそうな社員というのはわかりますか。
【IT】人の器というのはとくに非常時にわかります。ふだんはどっちが優秀なのかわからなくても、とんでもない事態が発生したときに違いが出るものです。とくに東日本大震災のときはよくわかりましたね。思考停止になってしまう人とか仕事から逃げ出したりした人もいたが、冷静に落ち着いて整然と行動する人もいました。現に今、後者の人のほうが偉くなっていますね。とくに役員の場合、平時は部下がちゃんとやってくれるので、判子だけ押していればいいが、そうでないときこそ力量が問われる。
――本人の不祥事はどの程度出世に影響しますか。
【金融】パワハラ、セクハラをやったら完全にアウトです。セクハラは言語道断で降格。微妙なのはパワハラの程度ですが、今は社会全体が許さないし、最近は銀行はとくに厳しくなっています。
【IT】レベルによるが、うちもアウトです。レベルによっては1回ぐらいは大目に見ても、スリーストライク、3回目は完全にアウト。とくに役員は余計に厳しく、ワンストライクでアウト。とくにセクハラなんかが株主総会で問題になったら大変です。
【流通】パワハラはダメだという認識ですが、現場では結構あるのも事実。体育会的組織だから秩序を保つために厳しいことを言う上司も多いし、それが当然と受け入れている風土がある。だから1、2度のパワハラぐらいでは出世に響くということはない。
【メディカル】おカネが絡む不祥事はとくにまずい。たとえば接待費の不正流用など、お客さんと会食していないのにそれを理由に精算したことが発覚すれば役員の芽はなくなります。パワハラ、セクハラの場合は一定の禊(みそ)ぎの期間をおき、たとえば1つの事件が発生し、3年以内に再び起こしたらアウト。かなり昔にやっていた場合は、そのときに出勤停止とか禊ぎも終わっているから大目に見ることはありますね。
【金融】うちは女性と一対一で飲みにいくこと自体がアウトです。上下の関係や既婚者の男性が部下の女性と一対一というのはありえない。もし2人でいるところを別の社員が見たらウワサのタネにはなるし、ペナルティですね。すぐに人事に聞こえてくるし、それ以上の出世はありえません。セクハラにまで発展し、通報されたら間違いなく降格でしょう。
【IT】異性の部下との一対一での飲み会禁止は今では企業の常識。管理職のコンプライアンス研修でも繰り返し、そのことは伝えている。一対一で飲んだら、たとえ何もなくてもセクハラで訴えられたら抗弁できません。ただ、そうはいっても2次会、3次会の流れで2人だけになってしまうことはある(笑)。
【メディカル】月に1回程度、社員の懲戒案件を裁いているが、何か問題が起こるときは3次会で一対一になってしまうケースが確かに多いですね(笑)。実際にセクハラ事案で裁いたケースもあります。一対一になると口説きモードに入ってしまう男性が実際にいますから。
【メーカー】部下の女性が元気がないので心配して食事に誘った上司がいました。ところが相手の女性は上司が嫌いだったらしく、セクハラ事案で通報してきたこともあります。