本好きにする極意は、釣りの「まき餌」

そこで、親にしてほしいのは「まき餌」だという。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/smiltena)

「何に興味を持って文字を読みだすかは人によって異なります。それは親でもわかりません。だから、子供が好きそうなジャンルの本をいろいろ買って撒いておきましょう。おびき寄せて、食いついたら、しめたもの。一気に釣りあげればいい。すかさず本屋や図書館に連れていって、おもしろい本がほかにもたくさんあることを教えてあげるのです。子どもを本の虫にするためには釣りの極意を拝借するのです」

読ませるのは漫画でもいいとなれば、読書好きにさせるのは難しくなさそうだ。しかし、そのまま放っておくと漫画しか読まない子になってしまうのではないだろうか。

柳沢校長はこの点も心配もないと断言する。

マンガばかりの子も活字の本を読むようになる理由

「文字を読むこと自体に慣れていない時は、漫画や絵本などに描かれた絵に理解が助けられます。しかし、数をこなして文字を読むことに慣れてくると、今度は絵が必要なくなってくる。場合によっては邪魔になってきます。なぜなら、絵があることで、言葉が伝えてくる情景が限定されてしまうからです」

たとえば、伊藤左千夫の『野菊の墓』を読んだ時。

そこに出てくるお墓は、いったいどんななのだろうか。周りには、どんな野草が生えているのか。そこで祈っている時の気持ちは、どんななのだろうか――。

読書好きの人には、活字だけでも自然と情景が浮かんでくるだろう。その時にイメージと違う絵があると、なんとなく心地が悪いものだ。原作が好きだった小説がドラマ化された時、演じる俳優が自分のイメージと合っていないと違和感を抱くことがある。文字に親しんでいくと、やがてこの領域にたどりつくというわけだ。

「活字だけの本を読めるようになったら、紙芝居をつくらせてみるといいです。どんなイメージが思い浮かんだのか、情景を描かせる。あるいは、感想文に絵をつけさせる。こうしたことをすると、イマジネーションすることをより楽しめるようになっていきます」