各紙は「石破氏を閣僚には起用しない方針」と報じる

次の焦点は人事である。自民党総裁選で連続3選を果たした安倍晋三首相は10月初旬、内閣を改造し、新たな自民党役員を決める。

各紙の報道によると、内閣改造では麻生太郎副総理兼財務相と管義偉官房長官の留任を決めている。これに加え、日米の閣僚級による貿易協議を担当している茂木敏充経済再生相、北朝鮮問題を抱える河野太郎外相、ロシア経済協力相を兼務し北方領土問題解決にあたっている世耕弘成経済産業相の3閣僚を留任させる。

党役員人事では岸田文雄政調会長と二階俊博幹事長を続投させる方針だという。

問題は石破茂元幹事長の人事である。

2018年9月23日、米国へ出発する安倍晋三首相と昭恵夫人(写真=時事通信フォト)

いまのところ、安倍首相は石破氏を閣僚には起用しない方針だと報じられている。総裁選中に憲法改正や経済政策を巡って考え方の違いが明確になり、石破氏の起用による内閣不一致という事態を避けたいのだという。

しかしこれは表向きの理由にすぎない。政策面で多少の違いがあるのは当然だ。安倍首相は総裁選で己に立ち向い、そして肉薄した石破氏を恐れているのではないか。

政治家の器の大きさは、考え方で相反する人物をどこまで起用できるかで決まる。いま安倍首相という政治家の鼎の軽重が問われている。

党員票の45%を取られる「健闘」を許した

永田町では、安倍首相は総裁選で勝ったとはいえ、石破氏に“健闘”を許したという見方が強い。

安倍首相は国会議員票では80%という票を得ながら、37都道府県の党員票では55%しか獲得できなかった。

前回の2012年の総裁選で石破氏は党員票の55%を獲得し、安倍首相の出鼻をくじいた。今回も45%と安倍首相に迫っている。

この結果、石破氏を「ポスト安倍の最右翼に躍り出た」と評価する向きもある。安倍首相は石破氏を黙らせることができなかった。石破氏は安倍首相にとって目の上のタンコブなのだ。

安倍首相は9月28日に国連総会が開かれた米国から帰国し、10月1日の月曜日に党役員人事を決め、2日に内閣改造人事を行う見通しだ。

人事の調整は難航するだろう。安倍首相を支持する自民党5派閥を中心に入閣を期待する国会議員は多いのに反し、ポストは限られているからである。