石破氏の表情は、敗者のそれではなかった
石破氏は敗北の翌々日の22日、地元鳥取県倉吉市で支援者を集めマイクの前に立っていた。
「選挙は終わった時から次の選挙が始まる。いつ何があってもいいようにしておく」
語気を強めて語る石破氏の表情は、敗者のそれではない。拍手する出席者も憔悴した様子は感じられない。
総裁選の結果をおさらいしておきたい。議員票は安倍氏が329票、石破氏が73票。党員票は安倍氏が224票、石破氏が181票。合計は安倍氏553票、石破氏が254票だ。安倍氏は3分の2以上の票を得て、石破氏は安倍氏の半分も取れなかった。議員票にいたっては得票率18%にとどまった。
総裁選に初めて挑戦する議員なら「善戦」と言ってもいいだろう。例えば今回の総裁選で出馬を目ざし、かなわなかった野田聖子総務相が「254票」を取れば健闘だ。しかし、石破氏は6年前の総裁選にも出馬しており、本気で首相の座を目指して活動していた。それで善戦といえる得票とはかけ離れている。
政権寄りメディアも「石破氏健闘」を強調
にもかかわらず、マスコミ各社の報道は石破氏に好意的だ。総裁選の結果を報じる21日朝刊の見出しは「石破氏善戦 地方票の45%」(朝日新聞)「石破氏善戦 党員票45% 議員票も20上積み」(毎日新聞)、「石破氏健闘『次』狙う」(読売新聞)、「石破氏『ポスト安倍』望み」(産経新聞)、「石破氏 目標超す地方票」(日経新聞)など。
安倍政権に批判的な朝日、毎日の両紙が石破氏に好意的になるのは分かるが、安倍氏寄りの論調が目立つ読売、さらには総裁選期間中に石破氏を批判する記事を何度か掲載した産経まで石破氏に温かい見出しの記事が並ぶ。
おそらく、各紙が事前予測で、石破氏の得票がもっと低くなると予測していたため、整合性を取るために「石破氏健闘」と書かざるをえなかったのではないか。そんな「業界の事情」で、石破氏は得したといえる。