「安倍政治はすでに限界と言わざるを得ない」

9月21日付の新聞各紙は、前日に行われた自民党総裁選について一斉に社説を掲載した。今回はこのうち朝日新聞と読売新聞の社説を読み比べてみたい。

朝日社説は大きな1本社説で、「3選はしたものの」「安倍1強の限界明らかだ」との見出しを掲げる。安倍首相を嫌う朝日らしさが滲み出ている。書き出しも手厳しい。

「1強の弊害に真剣に向き合わず、異論を排除し、世論の分かれる政策も数の力で強引に押し通す。そんな安倍政治はすでに限界と言わざるを得ない。さらに3年の任期に臨むのであれば、真摯な反省と政治姿勢の抜本的な転換が不可欠である」

「すでに限界」「転換が不可欠」とまで言い切っている。社説としては、かなり強い調子だと言っていいだろう。

次に朝日社説は「『品格』なき締めつけ」との小見出しを付け、こう書く。

「表の論戦を極力避けようとする一方で、水面下では首相を支持するよう強烈な締めつけが行われた。『〈石破さんを応援するなら辞表を書いてやれ〉と言われた』。石破派の斎藤健農水相は首相陣営から、そんな圧力をかけられたと明かした。『官邸の幹部でもある国会議員から露骨な恫喝、脅迫を受けた』と、フェイスブックに書き込んだ地方議員もいた」

斎藤農水相の発言に対し、安倍首相は「もしそういう人がいるんであれば、名前を言ってもらいたいですね」と応じた。斎藤氏は、結局、圧力をかけた人物の名前を公表しなかったが、この内閣改造で農水相を交代させられる見通しだという。一体ウソをついたのはどちらなのだろうか。

「『権力は腐敗する』というのが歴史の教訓」

朝日社説はさらにこう書いている。

「『権力は腐敗する』というのが歴史の教訓だ。それだけに、強い力を持った長期政権においては、謙虚に批判に耳を傾け、自省を重ねる姿勢が欠かせない。危惧するのは、首相にその自覚がうかがえないことだ」

「権力は腐敗する」。同感である。権力の腐敗を食い止めることができるのは、国民の目であり、世論である。その世論を追い風に権力に立ち向かうのが、ジャーナリストだ。

「引き続き政権を担う以上、その前提として求められるのが、問題発覚後1年半がたった今も、真相解明にほど遠い森友・加計問題に正面から取り組むことだ」
「首相に近い人物が特別扱いを受けたのではないかという疑惑。そして、公文書を改ざんしてまで事実を隠蔽する官僚。国会は巨大与党が首相をかばい、行政監視の責任を果たせない」
「こんな政治をたださねば、悪しき忖度もモラルの低下も歯止めが利かなくなる。その悪影響は社会の規範意識をもむしばみかねない。問題のたなざらしは許されない」

今年、朝日新聞は公文書改竄のスクープで新聞協会賞をものにした。うぬぼれることなく、ジャーナリズムの役割を果たし続けてもらいたい。