GDPを理解していないビジネスパーソンが多い

私も経営コンサルタントとして対応に苦慮した企業がいくつかあります。経済の状況を的確にとらえることが大切なのです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/MarioGuti)

経営のかじ取りをしようとするとき、こうした社会の流れや外部環境をチェックすることがとても重要です。現在であれば、AIやロボット化も大きなキーワードとなりますし、中国経済が世界中で大きなプレゼンスを持つ中、日本にとっての1、2位の貿易相手国である米中間での貿易摩擦が激化していることなどにも常に目を配らなければなりません。

同時に国内では人手不足が続いており、その中で、政治主導で「働き方改革」が行われようとしていることも経営には大きなインパクトを与えるはずです。「同一賃金、同一制度」や「残業規制」に対応しなければなりません。さらには、少子高齢化や財政赤字の問題がボディーブローのように日本経済に影響を与え続けています。

こうした外部環境は、経営者のみならず、ビジネスパーソンも注視していく必要があるのです。

経済の基礎2【GDPの定義と背景を正しく理解する】

経済を学ぶ上で、出てくる用語の定義とその数字を知ることも大切なことです。

特に、ニュースでもよく登場する「国内総生産(GDP)」です。どういう意味をもった数字なのか、きちんと説明できるでしょうか。実は、これがあやふやなビジネスパーソンが少なくありません。社会の教科書で習う基本中の基本ですが、案外、分かっていないのです。

国内総生産(GDP)は、「ある地域で、ある一定期間に生み出された付加価値の合計額」のことです。「日本国内で、一年間に生み出された付加価値の合計」は「日本の国内総生産(GDP)」です。

付加価値とは、それまでの価値に加えられた価値のこと。例えば、飲食店が購入した肉や野菜で料理を作り、顧客に食材の額以上に高く提供すれば、儲かります。この儲け、つまり売上からコストを引いた金額が、付加価値です。いろんな企業の「儲け」の集合体が国内総生産(GDP)になります。

そして、この国内総生産(GDP)には2つの種類があります。

まず、「名目国内総生産(GDP)」。これは売上からコストを引いた金額の合計額です(実額)。もうひとつは、「実質国内総生産(GDP)」。これは名目GDPをある時点の貨幣価値に換算した金額です

経済の規模を見る際には、前者の「名目国内総生産」を使うことが多く、成長率などを時系列で見たり諸外国と比べたりする際は後者の「実質国内総生産」を使用します。

なぜ、国内総生産(GDP)の定義を理解しておかなければならないのか。それは、読者の皆さんが毎月もらう「給料」と大きな関係があるからです。

最近の名目国内総生産は約550兆円です。これは繰り返すように、日本の企業が稼いでいる付加価値の総額です。企業は、この稼ぎの中から、社員に給料を払います。自営業者は稼いだ中から自分の収入を得ます。その額(雇用者所得)は、名目国内総生産(約550兆円)の5割程度、約270兆円。これが皆さんに分配されているのです。つまり、働く人の一人あたりの名目国内総生産が上がらない限り、給与は上がらないということです。

さらに押さえるべきポイントは、日本の名目国内総生産(GDP)は1990年代の初頭からほとんど増加していないという事実です。この30年間ほど、きわめて低い成長しかしていないのです。ない袖は振れません。自分の給与を上げるためには、自社の付加価値額を高め、日本の国内総生産(GDP)を高めなければならないのです。