この先5年、日本経済はどのように変わっていくのか。雑誌「プレジデント」(2018年7月2日号)の特集「あなたは今、何を学ぶべきか」では、6つのポイントにわけて識者に解説を頼んだ。第6回は「五輪後の日本経済」について――。(第6回、全6回)
PART6:五輪後の日本経済 20年代に日経平均は最高値更新か
不動産市場と同様に、日本経済の先行きで懸念されているのが、「2020年の東京五輪開催の反動で急激な需要の落ち込みが発生し、景気悪化が起こるのではないか」ということだ。しかし、野村證券金融経済研究所シニア・リサーチ・フェロー兼アドバイザーの海津政信さんは「一時的な調整局面はあるものの、大幅に悪化するようなことはないでしょう」と述べる。
理由はいくつかある。1つは建設需要の継続。建設業界は現在「バブル」といわれるほど活況で、それを象徴するようにゼネコン大手4社の受注高は高水準で推移していること(図1参照)。「いま建設現場では、技能工不足で建設に着手できずに受注残が積み上がっています。27年開業予定のリニア中央新幹線も工事が本格化するのは20年以降で、東京五輪後に建設需要が大きく減る心配はありません」と海津さん。
急増するインバウンド需要も、さらに成長する見込みだという。17年の訪日外国人旅行者は2869万人(前年比19.3%増)で過去最高を更新(図2参照)。国は五輪開催の20年に4000万人を目標に掲げているが、「目標は十分に達成が可能です。五輪開催の反動による減少も起きず、リピーターの増加で観光立国のイタリア並みの年間5200万人超の水準へ伸びるでしょう」と海津さんは予測する。