店主の話を聞いて、私はこれぞ経営におけるリスクマネジメントの良いお手本だと感心しました。

コストをかけずに小さくトライして、その結果をもとに最も成功確率が高いところに限られたお金を投資する。やっていることは、ソフトバンクの目標達成プロセスとまったく同じであり、リスクを最小化しながらリターンを最大化する手法として見事なものです。

このように、たとえ個人経営の小さな会社だとしても、知恵を使えばお金をかけずに大きな成功につなげる方法は必ず見つかります。今の時代、「お金がないからビジネスができない」というのは、単なる言い訳になりつつあるのです。

他人の知恵を借りてアイデアを生み出せ

「知恵を出せと言われても、自分には孫社長のような発明の才能なんてないし……」

そう思う人がいるかもしれません。

でも、大丈夫です。事業のアイデアをゼロから自分で考える必要はありません。

どこかで成功しているモデルを持ってくればいいのです。

孫社長も、他人の知恵を借りてアイデアを生み出してきました。

ソフトバンクを創業する前、孫社長は留学先の米国でソフトウエア開発会社を設立しています。事業内容は、日本で大流行したインベーダーゲーム機を米国に輸入販売するというものでした。すでに日本ではブームが下火になりつつあったので、機械を安く買うことができたのです。これはつまり、日本で大成功したビジネスモデルを米国に持っていったということです。

ある市場で成功したモデルであれば、別の市場で成功する確率も高くなります。少なくとも、ゼロから考えたモデルに勝負をかけるより、リスクは絶対的に小さくなります。

ソフトバンクの「タイムマシン経営」とは

ソフトバンクは、「タイムマシン経営」だと言われることがよくあります。

ヤフーにしろ、iPhoneにしろ、「海外で成功している最先端ビジネスは、時間差で日本でも成功する」という法則を証明してみせたからです。

その意味で、インベーダーゲーム機の輸入販売はいわばタイムマシン経営のはしりのようなものであり、その後もずっと孫社長は「どこかで成功しているモデルを持ってくる」というやり方を続けていることになります。

1990年代には、時価総額3000億円以上の米国のIT企業と組んで、次々にジョイントベンチャーを設立しました。