高度成長が干潟の遠く先まで引いて行ってしまった現在、かつての亡霊、すわなちイデオロギーと企業活動を結びつけ、あまつさえそこにデマとウソが混じるのはゆゆしき事態である。そして私たちが思っている以上に、民間企業はネットの評判やネットからの攻撃を気にしている。

クレーム対応の予算は限られており、よってクレーム対応の人員は少なく、根拠無きネットの悪評は、もはやそれを信じようと信じまいと、グーグル検索の履歴から法的手段を執る以外に、半永久的に抹消できないからだ。

そうなると最初から、毒にも薬にもならないプロモーションに徹しようと企画会議は無難な路線を決定する。結果その消極姿勢から出てきたものは、やはり毒にも薬にもならないものだから、誰からも忘れ去られていく。

企業利益は減衰し、株価がじりじりと下がる。社員の給与やボーナスはカットされる。株主には減配最悪無配になる。よって経済活動全般が萎縮する。目に見えないくらいの単位で、徐々に徐々に、だが確実にこの国の経済が縮んでいくのだ。デフレスパイラルそのものである。

ネトウヨは日本経済を傾けさせるわが国の敵

こんな馬鹿馬鹿しいネット発の「企業炎上」案件はもうこのくらいでお仕舞いにしないといけない。日本経済にかつてあったたけだけしい躍進と成長への力は、馬鹿で無知なネットの声なき声によって潰されようとしている。

そうなってくると日本経済はいよいよもう、容赦なく、日本経済が戦争の荒廃から立ち直り、さらなる跳躍をみせようというはるか60数年前、「もはや戦後ではない」と記された経済白書が、いみじくも同じ文章の後半において予言的に警告した“努力”を怠れば、アジア諸国はわが国に追いつき“そして追いこされる”どころか、もうとっくにそのアジア諸国に追い越されて、スペインやポルトガルといった「かつての大帝国」と同じように、一敗地にまみれ、数世紀にわたって、単なる東アジアの中堅国家として、永い永い黄昏(たそがれ)の斜陽時代を迎えるだろう。

本連載では、以上のような危機感を前提に、ネトウヨたちが日本経済を傷つけてきた数々の馬鹿騒ぎを紹介していく。読者と問題意識を共有できれば幸いである。(次回に続く)

古谷経衡(ふるや・つねひら)
文筆家。1982年生まれ。保守派論客として各紙誌に寄稿する他、テレビ・ラジオなどでもコメンテーターを務める。2012年に竹島上陸。自身初の小説『愛国奴』(駒草出版)が話題。他の著書に『女政治家の通信簿』(小学館)、『日本を蝕む「極論」の正体』(新潮社)、『「道徳自警団」がニッポンを滅ぼす』(イースト・プレス)他多数。
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