年をとってからも恋愛をしている人は、どんな悩みを抱えているのか。博報堂生活総研がQ&Aサイト「OKWAVE(オウケイウェイヴ)」に投稿された5万件の「恋の悩み」を世代別・性別で分析したところ、60代女性の投稿に頻出するのは「浮気」「許す」というワードだったという。いったい何に悩んでいるのか。博報堂生活総合研究所上席研究員の酒井崇匡氏が考察する――。(第3回/全3回)

そもそも60代は恋に悩むのか?

博報堂生活総合研究所の持つ生活者観察手法(エスノグラフィ)の視点でデジタルデータを分析する「デジノグラフィ」の試み。日本初、最大級のQ&Aサイト『OKWAVE(オウケイウェイヴ)』に集まった恋愛相談、恋の悩みの分析結果をご紹介します。この分析はオウケイウェイヴ開発本部の齊藤学シニアエンジニアのご協力のもとで実施しました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Wavebreakmedia)

第1回では20代男女、第2回では40代男女の恋の悩みについて掘り下げましたが、第3回の今回は、より上の世代である60代男女の恋について掘り下げつつ、デジノグラフィの今後の可能性についても考えていきます。

30代の私にとって60代はあまりにも大先輩すぎて、どんな恋の悩みを持っているのか、そもそも、恋に悩んでいるのか想像もつきません。まずは、OKWAVEの恋愛カテゴリーに寄せられた直近5年間の質問約9万件のうち、60代男女からの投稿がどのくらいの割合を占めているのか確認したいと思います。

Q&Aサイトを利用するリテラシーの持ち主

60代男女の投稿は合計で418件、全体の0.5%程度とさすがに少数派です。そもそも60代は恋愛から“卒業”している人も他の年代に比べて多いことに加えて、Q&Aサイトに質問を投稿するのは、同世代の中でもリテラシーが高い人に限られるということも考えられます。博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が行ったメディア定点調査2018によると、東京エリアの60代のスマホ保有率は男性で約5割、女性で約6割となっており、他の年代との差は徐々に埋まりつつあります。また、われわれ博報堂生活総合研究所が2年前に行ったシルバー調査では、60代前半のパソコン保有率は約6割でした。この世代でもデバイスを使いこなす人は増えているため、「60代だからネットリテラシーが低い」とは一概に言えないのですが、Q&Aサイトの質問を投稿するくらいなので、それなりに詳しい層ではあるでしょう。

全体から見ればごく少数でも、数としては400件以上の恋の悩みが60代から投稿されているのは事実で、その内容をひもといてみると「確かにこの世代ならではの悩みだ」と納得させられてしまうものも多いのです。