認知症高齢者と家族を、いかに支えるか

都が重点的に取り組んでいる認知症対策についても、ふれさせてください。先日、朝丘雪路さんが亡くなられました。認知症を患っておられたそうで、津川雅彦さんが懸命に介護されたのだろうとお察しします。

しかし、この問題は他人ごとではありません。認知症を抱える都内の高齢者は、25年には約56万人に達すると見込まれています。彼らと家族をどう支えればいいのでしょうか。

現在、認知症高齢者の約6割は自宅で生活しています。認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる仕組みを整えていく必要があります。都は、研究機関の知見を活用して先駆的な2つの取り組みを開始します。

1つ目は、高齢者が多く居住する大規模団地などにおいて、認知症の人や家族、地域住民が交流できる拠点を設ける区市町村を支援し、「認知症とともに暮らす地域づくり」を進めます。もう1つが、妄想や暴言、介護拒否など認知症に見られる行動・心理症状、通称「BPSD」の改善を図るケアプログラムの普及です。スウェーデンで評価の高いプログラムを参考に、日本版として開発・導入したもので、「BPSD」症状をオンラインのシステムに入力して数値化。そのデータを基に、症状の背景にある利用者のニーズやケアの視点を職員間で共有し、たとえば「ゆっくり話す」など、チームでその人に合ったケアを実施します。その結果、2カ月後には認知症に見られる妄想といった症状が落ち着くなど、多くの事例で症状の改善や出現頻度が減少する成果が見られています。18年度から、参加する事業所の募集や支援を行う区市町村との連携・協力を進めて、今後、都内全域への普及を目指してまいります。

母を看取る中で、考えたこと

実は私も、数年前に両親を看取りました。父は特養で、母は自宅で最期を迎えました。母は大変な愛煙家で、最期まで煙草で一服しながら、大好きなすき焼きをつつき、旅立っていきました。今でも母がベッドから下りた合図でチャランチャランと鳴る音が、耳にこびりついています。あの音が鳴るたびに、私は2階から転がり落ちるように母の元へ駆けつけたものです。自宅で母を看取る中で、地域包括ケアシステムをどう構築していけばよいのか、私は利用者の立場から考えました。

今後、都では地域包括ケアシステムをさらに肉付けしていきます。都が目指すイメージは、適切な住まい、医療、介護といった専門的なサービス、住民を主体とする介護予防や生活支援サービスが一体的に提供されるシステムです。「人生100歳時代」に向けて、これまでの社会福祉に斬新な新しい切り口を加えて、みんなが光り輝いて人生を全うしていく、そのような東京にしていきたいと考えています。

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
東京都知事
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。