スタジオ化するディズニーランド

入場料を払えば、普段は手が届かないような服を自由に見ることができて、そこに「実際に着てみてもいいですよ」というサービスをつけらればさらに楽しい。当時はまだインスタグラムがここまで広がるとは思っていなかったのですが、すてきな洋服を着た自分の写真を撮って、シェアして、思い出に残す……ということができるんじゃないかと。

ダグ・スティーブンス・著、斎藤栄一郎・訳『小売再生 リアル店舗はメディアになる』(プレジデント社)

いま、親子や友人同士で髪型や洋服をおそろいにして楽しむ「リンクコーデ」がはやっていますよね。それで何が起こったかというと、ディズニーランドがスタジオ化しているんです。リンクコーデした自分たちの写真をインスタにアップする。それが増えていくとリンクコーデの「カタログ」になる。

昔はファッションの参考にするものとして雑誌くらいしかなかったのが、いまはインスタ上で多様なコーディネートのパターンを見ることができます。「じゃあ、今度はこれをまねしよう!」と言って、自分たちなりのアレンジを加えて写真を撮り、またそれをアップする。そうやってどんどんカタログが充実していくんです。本来の意味でのファッションミュージアムというものがあったら、そういうことが起きるのではないかと思っていました。

「服を着てそれを写真に残す」という体験を売る

実際に服を買わなくても、その服を着て、写真を撮ることができて、さらにコミュニケーションができれば満足、という人も少なからずいると思うんです。だから、たとえば入場料がディズニーランドと同程度の7000円だったとして、プラス3000円を払えばディオールやシャネルも着ることができる、とする。そしてその3000円の半額をデザイナーに還元する、といったことが可能になるわけです。

定価3万円の洋服を3000円で10回以上レンタルできれば、11回目以降は普通に売るより高い売上を作ることができます。そうすれば、おのずとデザイナーへの還元額も高まります。妥協しないタイムレスな商品を作ることと、多くの人に着てもらうことは両立できるんです。入場料を払って、買い物をしたらそのぶんキャッシュバックするというかたちにしてもいい。こういうことを考えるのが百貨店の社会的使命なんじゃないかとさえ思います。