消費者に「所有」を強いないアプローチ

いま、「限界費用ゼロ社会」「シェアエコノミー」といった言葉に象徴されるように、普通に暮らすためのコストは昔に比べたらどんどん下がっています。これがもっと進んで、ベーシックインカムは保障します、というところまでいったら人は何をしてすごすのでしょう。やはり体験しかない。でも現状、売る側は「買わせるための体験」という考え方しかしてないように見えます。そうではない、消費者に所有を強いないアプローチもあると思うんです。

わたしは最近ワンピースを買わなくなりました。とりわけ柄もののワンピースだったりすると、印象が強くて、何度も着れないんです。つまりコスパが悪い。いま、写真に写ることが非常に増えている時代なので、「あそこでも着て、ここでも着て」ということにはなりたくないですよね。だったらレンタルでいいんじゃないかと。昔考えていたのは、銀座や表参道にレンタル服のお店を出して、事前予約をした人が来店して着替えて1日過ごし、またお店で着替えて帰る、というようなビジネスです。モノとしての服よりも、その服を着るという体験を売る。

これはプラットフォームがあれば個人でもできることです。女性だったらよくわかると思うのですが、高い服ほど着なかったりしますよね。がんばって買ったのだから本当は着ているところを見てもらいたいし、写真も撮りたいのに、汚したくないとか、特別な日にしか着ないとかいろいろ考えているうちに結局着ないままになってしまう。家庭内の不良在庫です。それでもやっぱり所有していて、いつでも着られる状態にあるというのは大事なことです。であれば、いつでも使える権利は保持したまま、使わないときは貸すことが可能になればいいですよね。

ただ、着物のように値が張るものは個人間で数十万円するものを貸し借りするというのはリスクも高いわけです。だから間に会社が入って、保険もかけて、毎回クリーニングもしてくれる、というサービスがあったらいいなと。わたしも好きで仕立てた着物をこれまで10回くらいしか着ていません。着ないものを保管するためにレンタルクローゼットに年間何万円も払うのは誰が考えても無駄ですよね。保管料を無料にするぶん、貸し出してもよい、というサービスもありだと思います。たとえば百貨店は外商というすごいデータベースをもっていて、お客さまの家族構成やクローゼットの中身を全部知っている。使わないものはいったんお預かりする「保管+レンタル」のサービスは、すぐにでもできる気がします。