接客のうまい人は、どんな「話し方」をしているのか。今回、業界を代表する5社から5人の達人を推薦してもらい、それぞれのトーク術について聞いた。第3回は日本生命保険東京ベイエリア支社川崎駅前営業部の山岡由佳さんだ――。(第3回、全5回)

顧客の社長が、別の社長を紹介してくれる

国内大手の生保、日本生命。毎年開かれる保険販売部門の社内表彰で、2015年度、16年度と連続で営業職員5万人中1位を獲得した山岡由佳さん。17年度も1位獲得が濃厚だという。

日本生命保険東京ベイエリア支社川崎駅前営業部 山岡由佳さん

37歳のとき、知人に声をかけられたのを機に、専業主婦から保険営業職に転身した。

いまや会社を代表するトップセールスだが、実は人見知りというギャップがある。「入社当時は営業先で名乗るのが精一杯。いまも緊張はする」と照れ笑いする。その課題を克服する山岡さんならではの術がある。それは「観察力」だ。

訪問先でまず初めにすることは、相手の服装、応接間に置かれている小物や雑誌などを注意深く見ることだという。

「たとえば、着ているシャツがチェックやボタンダウンだったり、机の上にクルマの模型が置いてあったりすると、それがお客様の好きな物である確率が高い。そこを糸口に、会話を広げていきます」

いきなり商談は始めず、まずは相手への興味を示す。時には、身の上話や仕事上の相談を相手に持ちかけることもあるという。

「入社6年目でトレーナーになり、教えることの難しさにぶち当たったとき、人事部や総務部にいる先輩にアドバイスを仰ぎました」

自分自身のこともさらけ出し、時間をかけて、信頼関係を築いていく。また、初対面の顧客が加入している保険を否定しないことも心掛けている。契約時の背景を聞き、「当時はそうだったと思うのですが」と切り出し、相手に寄り添いながら新たな提案をしていく。

山岡さんは担当企業へ頻繁に足を運ぶことをいとわない。なかなか会えない社長には毎月情報誌を発送する際にA4サイズの便箋に1、2枚の手紙を添える。

「お客様に関係する新聞記事を読んだ感想や、ご家族の誕生日のお祝いメッセージなど毎月60枚ほど書きます。あまり慣れ慣れしい感じにならないように気を付けています」

日頃の積み重ねがあることで、「お会いしたい」と連絡をするとアポがすぐに取れる。

その結果、山岡さんを信頼する会社の社長が、別の社長を紹介してくれるようになり、契約が幾何級数的に増えていった。