接客のうまい人は、どんな「話し方」をしているのか。今回、業界を代表する5社から5人の達人を推薦してもらい、それぞれのトーク術について聞いた。第2回はソフトバンク ビッグデータ戦略本部企画開発部部長代行の加藤有祐氏だ――。(第2回、全5回)
孫正義の交渉と、家での交渉の共通点
「ソフトバンクグループの孫正義がビジネスの場面で話すのも主に交渉ですし、私が家で寝たくない子どもを寝かしつけるのに苦労しているのも交渉です。もちろん孫の交渉は最高レベルですけど」
そう話すのはソフトバンクの加藤有祐さん。加藤さんはグループ内約2万人が対象の社内講座の1つ「Win‐Win交渉力」の講師を務める。社内講師にはグループ内の認定制度があり、交渉力の講師は4人しかいない。さらに加藤さんはエンジニア出身という貴重な存在だ。
「価格交渉でいえば、安く買いたい側と高く売りたい側との対立と捉えたら、勝ち負けの関係になってしまいます。Win‐Winを目指すなら、まず相手の話をよく聞くこと。すると、相手は品質や納期など価格以外の条件を重視していると気づく場合がある。そこからお互いに満足度が高い結論を目指して交渉していきます」
加藤氏が最近まとめた交渉は他社への委託業務で、提示された費用を3割ほど減らせないかと考えて交渉の場に臨んだ。よく話を聞くと、相手が優先しているのは実績づくりだった。それならプロジェクトを加藤氏が責任をもって進め、実績づくりに貢献するという条件で3割の値引きに成功。価格交渉一辺倒では決裂していたかもしれないと振り返る。
「お互いの重要度を考慮して、共にハッピーになれるポイントを見つけ出す。これがWin‐Win交渉のポイントです」