逆風下で学んだ、人の巻き込み方
喫煙者の減少に加えて、ますます厳しくなる喫煙への規制。逆風の状況にもかかわらず加熱式たばこの開拓営業で抜群の成績を残しているのが日本たばこ産業(以下、JT)の八野佑基さんだ。
八野さんの仕事はJTの社運を担う新しいスタイルのたばこ「プルーム・テック」の法人向け開拓営業。仕事は大きく2つだ。
「1つは説明販売会開催の提案。先方の社員に集まっていただき、セミナー形式でプルーム・テックのよさを説明して物販とセットで行うものです。もう1つはオフィス内にプルーム・テックのみ使用可能なスペースを創設してもらう働きかけ。喫煙者率は約2割というマイノリティーな市場です。吸わない方からすると、プルーム・テックを知らない方も多く、はっきり言って興味のない話というところからのスタートになります」
八野さんがプルーム・テックの開拓営業に携わるようになったのは2016年10月。はじめはプルーム・テックが先行販売された福岡市に半年間ホテル暮らしをしながら、飛び込み営業も行った。
「ビルの1階から最上階まで、インターホンを押しながらローラー作戦のように何百社も回ったり、喫煙所でお声がけして話を聞いてもらいました」
禁煙・分煙などに取り組む企業が多いなか、説明販売会を開く、ましてやプルーム・テックの使用可能なスペースの創設という提案はハードルが高い。「はあ? タバコ? 何を言っているんですか?」と、厳しい対応をされることも少なくない。会社の環境を変えることにもなるので、相手の企業の担当者に社内調整や説得など、煩雑なことをしてもらわなければ話は進まない。
これまでに八野さんは70社を超える説明販売会を実施し、スペース創設はチームとして東京と福岡を合わせて約70社を口説き落とした。どのようにして人を動かしたのか。
「大切にしていることは、どれだけ相手の話を聞けるかです。プルーム・テックどうこうというよりも、コミュニケーションを密にし、先方の困っていることや悩みを聞き出し、お役に立てることはないかを考え、小さなことでも一生懸命お答えするようにしています。しかもできるだけ速やかに。それがうまく先方さんに響くと、徐々に信頼関係ができ、弊社と組むメリットがあるのではないかと思っていただけるようにもなります」
急がば回れ。先方の悩み解決のために、JTの他部署やグループ企業にコンタクトを取ったり、一緒に新たなビジネスチャンスの可能性を探したり。
「ルート営業ではない、新規営業だからこそ、当たり前の積み重ねが重要だなと。そこだけは忘れないようにやっています」
▼日本一のポイント:社内資産をフル活用
日本たばこ産業 たばこ事業本部 CRM推進部課長
1985年、兵庫県生まれ。立命館大学卒業後、菓子メーカーの営業を経て、2010年日本たばこ産業に入社。現在は東京で法人向けに「プルーム・テック」の開拓営業を行っている。