日々何を考え、何をしているのかが見えてこない富裕層の人々。トヨタグループの金融部門や外資系銀行を経て、富裕層向けサービスを請け負う元金融マンにその“行動原理”を聞いた。

個人資産の運用の知識や、経験を持たぬ富裕層

富裕層と聞いてまずイメージするのは、一代で財を成した方や、資産を代々受け継いできた方だと思います。加えて、私は大企業の現職役員や元役員も、富裕層に入ると考えています。

ワンハンドレッドパートナーズ共同創業者・社長 百武資薫氏

報酬が1億円を超える上場企業の役員は、有価証券報告書に記載し、開示することが義務付けられています。ちなみに2017年3月期決算の有価証券報告書で、報酬1億円以上の役員を開示した上場企業は221社、人数は457人で増加傾向にあると言われます(東京商工リサーチ調べ、17年6月30日現在)。

私は証券会社在籍時からそうした役員の方々とお付き合いがありました。2008年のリーマン・ショック以前だと、大企業の取締役でも、専務以上と常務以下では年収も退職金も格段に違いました。概ね、専務の退職金は3億円台、常務は1億円そこそこでした。

また、専務以上で関連会社に出向すると、職位は会長か社長で、年収・退職金が上がりますし、役員にはストックオプションも付与されています。これは、優遇された価額で自社株を買い、株価が上がったときに売却して利益が得られる仕組みですから、総資産額は相当なものになります。

しかし、会社役員は経営のプロではあっても、個人資産の運用については、多くの知識・経験を持たない方がほとんどです。企業経営と個人の資産運用は、まったくの別もの。私は証券マン時代に、そういう役員富裕層の相談も受けていましたから、欧米のファミリーバンクのような、個人資産の見守り役が日本にも必要と考え、ワンハンドレッドパートナーズを設立したのです。