富裕層の信用を得る方法に、方程式のようなものはありませんが、傾向と呼べる事柄がいくつかあります。

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富裕層の多くは、資産を今以上に増やしたいという欲求より、むしろ減らしたくないという心情のほうが、実は強いと思います。また「金は高きに流れる」と言いますが、情報も同様で、お金儲けの話ならば何もしなくても多彩な情報が彼らのもとに集まります。なかには詐欺や違法なものも含め怪しい情報も少なくないので、富裕層の関心は、いかにしてそれらに惑わされることなく資産を守るかにあります。

ですから、金融商品の場合なら「これは儲かりますよ」と勧めても、まず相手にしてはもらえません。運用を他人任せにする投資信託などは嫌い。自らの判断で投資し、失敗したら仕方ない、という心持ちなので、自ら投資したものがどれだけ社会に貢献するのかを強く意識していることが多いのも、富裕層の特徴です。寄付行為に節税効果がなく、社会に定着していない日本ならではの傾向だと思います。

休日に自宅へ呼んでもらえるほどの関係にならないとダメ

それらを前提として述べるなら、富裕層の信用を得る対処法は、年齢によって違ってくると私は思います。30~35歳くらいの営業職なら「若いけれどよく勉強している」とか「若いけれどよく考えてくれる」など「若いけれど」がよい評価につながります。若くても見どころのある人間なら、育ててやりたいという気持ちが、彼らにはあるからです。それゆえか、身なりや時間といったエチケットやマナーには極めて厳しいと認識しています。

その年齢のころの私は、金融や社会動向のみならず、幅広い知識と情報を持つ先輩を駆り出しては、よく顧客を訪問していました。若くて未熟な部分を先輩の知力・経験で補ってもらう意味もありましたが、同時に、真摯に対応しているという姿勢を相手に伝える意図もありました。先輩との顧客巡りは、私自身の勉強にもなりましたし、信頼を得る面でも功を奏しました。

40代になると、自身が金融マンとしての真価を問われるようになります。重要なのは、こちらの話を聞いてもらうのではなく、相手の話をよく聞くことです。

個人資産の運用は、その家の来歴や家族の事情などにより、顧客ごとに変わってきます。勧める金融商品も、その事情に合わせて組み立てますから、相手の事情を詳しく知る必要があります。平日に会社へではなく、休日に自宅へ呼んでもらえるほどの関係にならないと、なかなかプライベートな話はしてくれないものです。