身近な不安や問題を、解消してくれる便利屋

こちらから提供する情報も、最新・最先端のものでなければ、関心を持ってもらえません。たとえば、5000万円を超える海外資産の申告が義務付けられたことは、今では周知のことですが、税制が改正された12年以前から、私は海外資産を国内に引き揚げるように顧客に勧めていました。それは、海外の金融・不動産市場の動きが怪しくなってきたと感じたからです。

つまり、テレビや雑誌、インターネットで得られるレベルの情報に、富裕層は関心を示しません。逆にまだあまり世に知られていない、最先端の情報には鋭く反応します。また、関心を示す情報が、意外にも自分や家族の健康、息子や娘、孫の将来といった身近なことである場合も多いのです。ですから、家族の健康に不安があると聞けば、私は自分のネットワークを駆使して最先端の医療技術を持つ医師を紹介しますし、社会貢献という意味で、その研究開発への投資を勧めることもあります。単に情報だけではなく、その情報を使いこなせる人的ネットワークも、富裕層と付き合ううえでは非常に重要です。

要は、富裕層にとって重宝な人材は、身内の話も気兼ねなくできて、最新の情報をもたらし、しかも身近な不安や問題を解消してくれる便利屋なのです。そこをはき違えて、商品を売り込むつもりで接すると、その魂胆は簡単に見透かされてしまいます。相手を知ること、相手のために自分は何ができるのかを考え、その望みを叶えようとすることが信用、そしてビジネスにつながっていくのです。

百武資薫(ひゃくたけ・よしのぶ)
ワンハンドレッドパートナーズ共同創業者・社長
1958年、福岡県生まれ。同志社大学法学部卒業。トヨタフィナンシャルサービス証券(現・東海東京証券)、英国系銀行日本PB副代表等を経て2010年より現職。
(構成=高橋盛男 撮影=初沢亜利 写真=iStock.com)
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