猛暑特需後の「マイナス成長」というジンクス
しかし、猛暑効果だけを見ても経済全体の正確なトレンドはわからない。猛暑の年は、夏が過ぎた後の10~12 月期に反動が予想されるからだ。過去の例では、記録的猛暑となった1994年、2010年とも7~9月期は大幅プラス成長を記録した後、翌10~12月期は個人消費主導でマイナス成長に転じているという事実がある(図表3)。
つまり、猛暑特需は一時的に個人消費を実力以上に押し上げるが、むしろその後の反動減を大きくする姿がうかがえる。猛暑で売上を伸ばす財・サービスは、暑さをしのぐためにやむなく出費するものが多い。また、猛暑で野菜や果物の生育等への影響が避けられないことや、家畜も夏バテすることから牛乳や卵の供給減も予想される。さらに、海水温の上昇により漁獲量の減少も想定されることから、食料品の値上げも避けられないだろう。
従って、今年も猛暑効果で夏に過剰な出費がなされれば、秋口以降は家計が節約モードに入ることが予想される。特に特需が大きければ大きいほどその反動は大きいため、今年の秋は過去最大級の反動が起きる可能性が高いといえよう。
なお、夏場の日照時間は翌春の花粉の飛散量を通じても経済に影響を及ぼす。前年夏の日照時間が増加して花粉の飛散量が増えれば、花粉症患者を中心に外出がしにくくなることから、今年の猛暑は逆に来春の個人消費を押し下げる可能性があることについても補足しておきたい。
「異常気象」が消費税増税の先送りの理由に?
以上より、災害とさえ評価される今回の酷暑は、秋口以降の日本経済に思わぬダメージを及ぼす可能性も否定できないだろう。なお、今回の猛暑に関しては、例年より梅雨明けが早い異例の状況だが、一方で西日本を中心にかつてない豪雨災害も発生している。これらを「異常気象」という枠で捕らえると、さらなる経済へのマイナス効果も想定され、最終的には猛暑のみのケースと比べ異なる影響となる可能性がある。
異常気象の影響に関しては、猛暑の反動減もあり、秋口以降にかけて悪影響が目立つと見られている。しかし、その時期は奇しくも消費税率引き上げの最終判断と重なる可能性がある。今回の酷暑は災害との評価もある。従って、西日本豪雨や大阪北部地震の影響もあわせて、この夏の天変地異ともいえる異常気象は消費税率引き上げを先送りする理由になる可能性があろう。
災害で生産が低迷しているところに、景気にマイナス影響を及ぼす消費増税を行うのは適切ではないという判断がなされてもおかしくないからだ。消費増税の行方を見る上でも、今後も気象の動向から目が離せない。