東京から発想するだけでは、問題は解決できない。いまこそ地方の発想が必要だ。雑誌「プレジデント」(2018年4月30日号)では、地方から改革を進める4人の首長に、「いま必要な人材」について聞いた。第2回は三重県の鈴木英敬知事。テーマは「現場主義」だ――。(第2回、全4回)

「言語明瞭、マイク不要の知事」

三重県の鈴木英敬知事は、人口約180万人、県の職員約4500人を束ねる43歳の若い首長である。「言語明瞭、マイク不要の知事」。仄聞通りの人物である。鈴木知事の施策は、徹底した現場主義の上に立っている。それは、「幸福実感度日本一の三重」の実現を目指しているからにほかならない。

幸福実感度は、県民への意識調査アンケートで、幸福を10点、不幸を0点として実感を調査するもの。現在、三重県は6.71点で厚生労働省の全国平均(6.38点)を上回ってきてはいるもののまだ日本一には至っていない。知事が最も重要視している数値である。

幸福度アップのために何をすべきか。まずは自ら、週に数回各地を回り、地域住民と膝を交えて話すことだった。

「決断と説明責任が知事の大きな仕事です。意思決定する場合、現場の風景や地域の人々の顔が思い浮かばないと正しい判断ができませんからね」

この現場回りを続けることで、徐々にではあるが、手ごたえが出てきた。県の行政を支えるのは職員である。この現場力を約4500人の職員にDNAのように植えつけられないだろうか。

そこで、平成24年に三重県行財政改革の一環として打ち出した県職員人づくり基本方針を、平成28年12月に改定した。それは、主体的に能力向上に取り組む人材の育成である。

現場主義を徹底するために、地方公務員に必要な能力とは何だろうか。鈴木知事は、5つのポイントを挙げた。

(1)課題を発見し解決する能力
(2)異なるものを結びつける能力
(3)普通の感覚を持っていること
(4)「共汗力」を持つこと
(5)歴史と科学を理解する能力