「総理夫人」ではなく「安倍昭恵」として承認されたい

昭恵夫人は夫が下野中、猛烈に「自分探し」を始める。作家・曽野綾子の先導で、世界のさまざまな国を渡り歩いた。それまで「安倍晋三の夫人」としてしか位置付けられていなかった昭恵夫人がはじめて「安倍昭恵」としての自我に目覚めたのである。それまで、無名の仮面をかぶっていた昭恵夫人が、「安倍晋三の夫人」ではなく、「安倍昭恵」として承認されることを欲するようになっていく。

昭恵夫人のフェイスブックには、彼女が何か投稿するたびに、保守的な傾向を持ったユーザーから大量の「いいね」が届けられるようになる。当然その中には批判のコメントもあるものの、フェイスブックのなれ合い社会の中では承認の比重の方が高い。

昭恵夫人は同書で記述されるように、「エゴサーチ」を繰り返して一喜一憂する。一日何時間もネットに張り付いていた時期もあったという。

典型的な「意識高い系」の前衛

それまで他者からの評価に無関心だった昭恵夫人が、自我に目覚めたが故の「承認の確認」を繰り返し始めたのだ。「コンプレックスが故の猛烈な承認欲求」。典型的な「意識高い系」の前衛を安倍昭恵は突き進んでいく。

2012年、劇的な自民党の政権復帰と第二次安倍政権誕生後も、承認の塊になった昭恵夫人の暴走はとどまるところを知らない。前述「UZU」の経営は継続し、脱原発運動への傾斜、三陸の防潮堤反対、そして医療大麻解禁を主張するようにまでなった。

昭恵夫人の世界観にとって「土」は常に神聖性にリンクしていた。脱原発運動への傾斜は日本の「土」を放射能で汚染させてはいけない。三陸防潮堤への反対は三陸の神聖な「土」を人工のコンクリートで覆ってはいけないからだ。

そして無農薬の「土」から育ったオーガニック野菜とその提供(居酒屋UZU)へのこだわりは、「農薬」を汚染物と見なした無垢なる「土」への執着の到着点であり、その「土」から育った農産物の摂取は、心身の浄化を経てやがて崇高な精神世界への第一歩となる。その結果が神国日本や神社信仰、スピリチュアルな精神性への接続へとつながっていくのである。