どうしたら「がんの見落とし」を防げるのか
どうしたら「がんの見落とし」という医療ミスを防げるのだろうか。これに対する朝日社説の答えを簡単にまとめると次のようになる。
(1)CT検査などの画像を読む医師数を増やし、彼らの技術向上も図る
(2)電子カルテにIT(情報技術)を活用し、未読の報告書を警告するシステムを導入する
(3)診断時に患者に直接、報告書を渡す
どれも重要なことだ。最後に朝日社説は「医療の細分化・専門化が進むいま、患者も交えた幅広い情報の共有は、事故防止の観点からもその必要性を増している」と指摘する。「患者も交えた幅広い情報の共有」は重要だ。患者なしに医療は存在しえないからだ。
医療はだれのためにあるのか。医師や病院のためにあるのではない。患者のために医療は存在する。この基本を忘れてしまうから医療過誤が起きる。
産経社説は見出しもいまいちだ
産経新聞も7月2日付社説で取り上げている。だが朝日社説をなぞるようなところがあり、その主張もどこか重みがない。見出しも「画像診断の『価値』共有を」といまいちである。
そんな産経社説はこう書いている。
「救えるはずの命が救えなかったことを、関係者は猛省すべきだ。他の医療機関でも、同様の事態が起きていないか検証してもらいたい」
病院はその規模が大きくなればなるほど閉鎖的になりがちだ。他の医療機関に対して検証を呼びかけるのはいいことだが、問題は閉鎖的な病院をどう動かすかである。新聞社の社説としては、そこを主張しなければ意味がない。
「命をあずかる仕事である。連絡を取り、声を掛け合う慣行が医療現場にはないというのだろうか。これでは、報告書は紙切れになってしまう」
大半の医療過誤は基本的な診療行為が、おろそかにされるところから起きる。
声を掛け合うという慣行が医療現場にないのではなく、病院という組織が肥大化し、複雑になっていく過程で、声を掛け合って確認する当然の行為の自覚があらためて必要になってきているのだ。画像診断の報告書が未読にされるような事態が多発している以上、各医療現場のトップが「声を掛け合う」ことをあえて指導していくことが求められる。