「経費宿泊のホテルからプリペイドカード」はセーフ

いわゆる「自爆営業」で、従業員が自腹で商品を購入してノルマを達成していたらどうか。これは会社に損害を与えていないため、違法とはいえない。ただしノルマ達成により大きなコミッションがついたとなると詐欺罪になりえる。

会社の経費で宿泊したホテルからプリペイドカードを貰った。この場合はセーフ。ホテルと会社の間で宿泊代金の契約が成立しており、その通りに履行されただけ、会社は損害を被っていないと考えられるからだ。出張時に貯まったマイレージも同じ理屈。しかし、会社に私的利用を禁止する規定があれば、刑法上の横領や民事上の損害賠償、懲戒の対象になりえる。

▼仕事とお金、警察沙汰になるケースとは?
事例:営業がノルマ達成のため自腹で商品を購入した。
刑事:会社に損害を与えていないため問題なし。だがノルマ達成が報酬につながっている場合は詐欺罪になりえる。
懲戒:会社の風紀を乱した等、理由がある場合は懲戒の対象になりえる。

事例:ノートなど会社の備品を持ち帰った。

刑事:窃盗罪や横領罪に該当。黙認されることも多い。
懲戒:懲戒の対象になりえる。
事例:会社の年賀状が「お年玉」に当選、賞品を自分のものにした。

刑事:会社が購入した年賀状なら窃盗罪や横領罪に該当。会社から当選品に関する指示がない場合は、黙認されることが多い。

懲戒:当選品に関する規定があった場合は、服務規程違反で懲戒の対象になりえる。


事例:顧客に接待してもらったお礼に、商品を値引き。

刑事:不当な値引きと言えれば、適切な値段で売る義務に反しているので、背任罪になりえる。

懲戒:不当な値下げをした場合は懲戒の対象になりえる。


事例:定期代を多く受け取った。

刑事:会社を騙し金を得ているため、詐欺罪に該当。

懲戒:悪質なものは懲戒解雇もありえる。


事例:会社の経費で宿泊した際、「おまけ」のプリペイドカードを受けとった。
刑事:会社に損害を与えていないので、問題なし。ただ、特典品は会社に帰属する旨の規定があれば横領罪に該当。

懲戒:問題なし(私的利用を禁止する規定があれば懲戒の対象になりえる)。

※刑事とは別に、民事として損害賠償を請求される場合もある。

千葉 博
弁護士
千葉総合法律事務所代表。東京大学法学部卒。専門は企業法務、労働問題、保険。著書に『労働法 正しいのはどっち?』『人事担当者のための労働法の基本』など。
(構成=東 雄介 写真=iStock.com)
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