「参考人への侮辱に対する対応としては甘過ぎないか」
続けて朝日社説は指摘する。
「自らは喫煙歴がなく、受動喫煙でステージ4の肺がん患者となったという参考人は、修正すべき法案の問題点を淡々と指摘した。目の前の相手に対する誠実さも想像力もうかがえない穴見氏には、議員としての資質を疑わざるをえない」
「自民党の高鳥修一・厚労委員長は、穴見氏に口頭で厳重注意した。しかし、国会の品位を汚した、参考人への侮辱に対する対応としては甘過ぎないか。まずは自民党自身が、党内で厳正な処分を検討すべきだ」
朝日社説の指摘は強くうなずける。さらに朝日社説は訴える。
「安倍政権下での国会審議では、首相本人や麻生財務相らが、答弁席から不規則発言することがしばしばある。黒衣であるはずの首相秘書官が、野党党首の質問に対しヤジを浴びせたこともあった」
やじひとつとっても安倍政権の国会での態度はひどさの度を越える。これは「1強」や「官邸政治」が生んだ弊害だ。国民が怒りを爆発させない限り、安倍政権のこうした体質は改善されない。
最後に朝日社説はこう主張する。
「異論に耳を傾けず、批判に対し、敵意もあらわに言い返す。そんな政権の姿勢が、国会論戦の荒廃を助長しているのではないか。軽んじられているのは、結局、私たち国民であることを忘れてはなるまい」
同感だ。沙鴎一歩と同じ主張である。
国会議員を辞して、がん患者や国民にわびるべき
毎日社説も手厳しく批判する
次に毎日新聞の社説。1番手扱いの朝日とは違って2番手扱いではあるが、その見出しは「品位なき議員には懲罰を」と手厳しい。
中盤で毎日社説は書く。
「やじは、屋外での喫煙規制に関する質問に長谷川さん(注:参考人のがん患者、長谷川一男さん)が『なるべく吸ってほしくない』としつつ、喫煙者にも配慮し『屋外喫煙所も一つの方法だ』と言ったときだった」
「長谷川さんはたばこを吸わないが、長く受動喫煙の環境下にあったという。がん患者に非情とも言える仕打ちだが、穴見議員が地元の大分がん研究振興財団の理事の役職にいたというのだから、あきれる」
参考人はがん患者だったが、その発言は喫煙者にも配慮したものだった。それなのに「いいかげんにしろ」である。穴見氏の人間性が透けて見えるようだ。国会議員としての鼎(かなえ)の軽重が問われる。繰り返すが、穴見氏は国会議員を辞してがん患者や国民にわびるべきである。毎日社説が「非情な仕打ち」と指摘するのは、よく分かる。