なぜあなたは仕事で迷うのか。それは「ミッション」が明確になっていないからだ。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は、ミッションの見つけ方として「名前のワーク」を提唱している。自分の名前の由来を、一字ずつ徹底的に調べるのだ。このワークを行ったある経営者は、家族とのわだかまりが解け、人目もはばからずに泣いたという。一体なにが起きたのか――。

※本稿は、田中道昭『「ミッション」は武器になる―あなたの働き方を変える5つのレッスン』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

あなたの名前に込められた本当の意味は?

私自身が取締役を務めている東証ジャスダック上場企業・フェスタリアホールディングスに、貞松隆弥(たかや)さんという社長がいます。貞松社長は長男で3代目の経営者です。

田中道昭『「ミッション」は武器になる―あなたの働き方を変える5つのレッスン』(NHK出版新書)

もともと貞松家は、貞松社長の祖父の代で時計、父親の代でメガネ、そして現社長の代でジュエリー事業を行ってきました。現在のフェスタリアはジュエリー専業のグループとなっており、国内82店舗、海外6店舗を展開しており、売上を伸ばし続けています。貞松社長は、3代目としての魂と創業者としての起業家精神を兼ね備えた経営者でもあります。

貞松家では代々、「豊」という漢字を名前につけることが多く、祖父は「豊市」、父親は「豊二郎」、弟も「豊三」という名前がつけられていました。

しかし、貞松社長自身の名前は「隆弥」で「豊」がつけられていません。貞松社長は、小さいころから「自分にはどうして豊という名前がつけられていないのか」「自分はあまり期待されていないのではないか」「自分は家業を継ぐわけではないのか」という気持ちを持っていたそうです。

自分の名前に、重要な価値観を見出す

私が初めて貞松社長にお会いし、二人で夕食に行った際にこの話を聞き、私が立教大学ビジネススクールの授業や企業研修などで行っている「名前のワーク」を紹介しました。

これは自分自身のミッションを見つけるために、「自分の名前の中に、重要な価値観を見出す」という手法です。自分の名前を一字ずつ書き出し、辞書やネットでそれぞれの言葉の意味を調べます。

自分の名前の一字一字の意味を検索までして、きちんと調べたことがある人は意外と少ないものです。漢字には実にさまざまな意味があり、やってみて初めてわかる新鮮さがあります。