なぜあなたは仕事で迷うのか。それは「ミッション」が明確になっていないからだ。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は、ミッションの見つけ方として「5つのレッスン」を行っている。その結果、自分の欠点だと思っていたことを、自分の強みだと再認識して、「倒産からの逆転劇」を成功させた人がいる。一体なにが起きたのか――。
※本稿は、田中道昭『「ミッション」は武器になる―あなたの働き方を変える5つのレッスン』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。
会社倒産から「バレエ教室」のスクール事業へ
山岡哲司さん(仮名)は60歳。あるメーカーに勤務しながら、都内のビジネススクール(経営大学院)に通う社会人学生です。定年を迎える年齢で、大学院に入り直すきっかけになったのは3年前のことです。
山岡さんは、父親から継いだ創業54年の自動車部品メーカーを倒産に追い込んでしまいました。受け身で「継いだ会社」ということもあり、「技術力さえあれば仕事が来るはず」とたかをくくっていたところがありました。
経営者としての「経営視点」や「コスト意識」に欠けており、立ち行かなくなってしまったのです。今は会社員として別のメーカーで働いています。
倒産を契機に、山岡さんは自分の人生や伴侶のことなどを真剣に考えました。その結果、妻がバレエ教室のインストラクターであり、プロのバレエダンサーであるため、夫である自分は「バレエ教室のスクール事業に取り組もう」と決めました。インストラクターとして現場に立つ妻を、企画や運営、管理など経営面をサポートすることにしたのです、
もともと妻がやっていたバレエ教室は、バブル期に口コミで約40名の生徒を抱えていました。ところが生徒の進学や就職、結婚などで直近では10数名に減っていました。そこで方向性を「シニア向けバレエ」に転換しました。
転換は大成功。生徒数は倍増し、さらに高齢者向けに「認知症予防クラス」を企画するなど、バレエ教室は活気づいています。