優先すべきはファンではない、選手の将来だ
筆者は中学、高校、大学、シニアと各世代の全国大会を取材してきたが、高校生の大会が選手たちの「熱量」が一番高いと感じている。部活動が活発で、全国大会がヒートアップするからこそ、日本はジュニア世代のレベルも高い。
例えば、今から8年前の2010年の陸上競技の世界ジュニア選手権(現・U20世界選手権)。日本勢は男女の個人種目で大きな成果を上げた。
金メダル1つ(男子200mの飯塚翔太)
銀メダル2つ(男子400mハードルの安部孝駿、同やり投げのディーン元気)
銅メダル3つ(男子走り高跳びの戸邉直人、女子400mハードルの三木汐莉、同1万m競歩の岡田久美子)
彼らの多くは現在も日本の主力級で活躍しているが、その後のシニアの世界大会ではメダルどころか、入賞ラインにも届いていない。なぜか。日本勢の伸び率よりも、他国の伸び率のほうが高いため、逆転されてしまうからだ。
▼「アスリート・ファースト」の精神が日本のスポーツを盛り上げる
スポーツ大国、アメリカのハイスクールにも部活はあるが、全国規模の大会はほとんどない。大半は州大会が頂点で、あとは近隣の州を制した高校と戦うことがある程度だという。アメリカは国土が広いという理由もあるだろうが、日本に当てはめると関東大会、近畿大会、東海大会のような地区大会で終わりだ。
スポーツ庁は部活動のガイドラインを設定しており、その中には、「多くの大会に参加することが生徒の負担とならないよう大会の統廃合を進める」という項目もある。移動や宿泊に負担のかかる全国大会(甲子園やインターハイにあたる大会)は縮小して、もっと地区大会(例・関東大会、東北大会、関西大会など)を活性化するのがいいのではないだろうか。
47都道府県から代表校が出ないと寂しいという甲子園ファンもいるだろう。しかし、優先すべきは選手たちである。「アスリート・ファースト」の精神で、彼らの将来性を大切にすることは高校スポーツ界の発展のみならず、日本のスポーツを盛り上げることにもなると考えている。