日本は北朝鮮という蚊を閉じ込める「蚊帳そのもの」
北朝鮮にとって人権問題は触れられたくない問題であり、米国側にとっても自国の人質を解放した今となっては同問題に触れることは得策ではない。そのため、同発言は「拉致問題について触れるなら日本は何らかの見返りをよこせ」というトランプ流のジェスチャーとしての側面があり、目の前に餌をぶら下げられて物欲しそうにしていた日本政府は米国から突き付けられる厳しい条件をのまざるをえないことになる可能性がある。
実際には、米国にとって日本は「蚊帳の外」ではなく、米国を守るために北朝鮮という蚊を閉じ込めておく「蚊帳そのもの」だ。トランプの言う通りのことが起きるなら、北朝鮮とのディール後の面倒な請求書は北朝鮮の周辺国に回ってくることになる。トランプは日本に対して北朝鮮の段階的な非核化への合意を促しつつ、北朝鮮への経済援助、そして米国の軍事兵器の追加購入を要求してくることになるだろう。
日本政府は対米追従の結果として不利な立場に追い込まれた自国の立ち位置を再確認すべきだ。そもそも北朝鮮は核兵器で日本を常に威嚇し続け、なおかつ拉致問題を引き起こした問題組織である。むしろ、本来の日本の立場は、北朝鮮から拉致に対する賠償金支払いを受ける側であり、金正恩の体制保証と経済援助を行う立場では断じてない。
トランプの書簡が示した事実は「北朝鮮は軍事力の優位な国家には膝を屈する」ということであり、国民の血税を金正恩に渡すくらいなら、その資金で有効な防衛力の整備に取り組むべきだろう。(文中敬称略)
(写真=時事通信フォト)