■ステップ2.からだを上機嫌モードにする

「不機嫌の芽」が出てきた瞬間に気づけるようになり、その場ではやり過ごせるようになったとしましょう。それでも慢性的に「不機嫌の芽が出やすい状態」が維持されているとなれば、まだまだ根本的な問題は解決できていません。「不機嫌の芽がわきにくい状態」を維持するために、普段から心がける必要があります。

そのために重要なのが、からだの調子をととのえることです。

「不機嫌」というと、メンタルだけに関係する話に思うかもしれません。たしかに不機嫌は気分のあり方なのですが、不機嫌をなおそうというときに、こころだけに働きかけることは必ずしも効果的ではありません。こころが落ち込みきっているときに「しっかりしろ」と声をかけても、残念ながらほとんど聞こえないのです。

メンタルケアの王道はむしろ、からだを経由してからこころに働きかける手法です。

■ステップ3.こころを取り戻すわざを身につける

からだを通してこころに働きかけるのがメンタルケアの王道だと話しましたが、からだの状態が上向いたときには、こころも大事になってきます。

たとえば仏教における修行とは、執着を断って精神を平らかにする技術を身につけていく過程でもあります。

「お金がほしい」
「美人になってちやほやされたい」
「あの子とつきあいたい」
「あいつより出世したい」

何かに執着していて、それが手に入っていないとき、人はどうなるでしょうか。

イライラしますよね。手に届かないならいっそ人から奪いたい、対象を破壊してしまいたいという衝動を抱き、それを実行してしまう人もいるでしょう。

執着や欲望、すなわち「煩悩」は、不機嫌は密接に関係しています。だからこそ、気分の変動があったときに、すぐ平常心を取り戻すわざを身につける必要があるのです。

齋藤 孝(さいとう・たかし)
明治大学文学部 教授
1960年生まれ。東京大学法学部卒業。同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に、『だれでも書ける最高の読書感想文』『三色ボールペンで読む日本語』『呼吸入門』(以上、角川文庫)、『語彙力こそが教養である』『上機嫌の作法』『三色ボールペン情報活用術』(以上、角川新書)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)『『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)など多数。
(写真=iStock.com)
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