「売れます(だからやりましょう)」には方向がある

なお、企画を通す場合などにおいて、「こういう企画です」ということと「これは売れます」ということと、どちらが結論なんだ?と思われませんか?

正解は「これは売れます」が結論です。もっといえば、「これは売れます。だからやりましょう」が結論です。結論とは、相手に動いてほしい方向を表したものです。

「こういう企画です」という言葉は、方向を表していません。いいのか悪いのか、好きなのか嫌いなのか、売れるか売れないか、わかりません。

「売れます(だからやりましょう)」には方向があります。売れるか、売れないかという選択肢がある中で、「売れます」と言っています。

プレゼンは相手に「動いてもらう」ために行うもの。だから、どちらに向かうのか、動いてもらう「方向」を出すのが結論です。

「頑張ったこと」を話してはいけない

さて、ここでは、私がさまざまな人の話を聞いていて、「これを言っちゃうから長くなるんだよね」ということをまとめます。

×頑張った「プロセス」を話す
私は今年と昨年の資料を検討したのですが、それだけでは足りないと思い、 10年間分の資料を前任の山田さんからもらって調査した結果、全体としてはA案を押していくべきではないかと思いました。

報告するにせよ、提案するにせよ、私たちはつい「自分が頑張ったこと」を話し始めます。でも、それは、相手が聞きたいことでしょうか?

たとえ内心、「2年くらいのデータを見ても正しいことはわからない。信憑性を高めるために言うんだ」と思っていても、いろいろ話すとかえって伝わりません。

あなたは頑張ったことを認めてもらいたいかもしれませんが、多くの場合、相手は、すぐにあなたの結論を聞いて判断したいと思っています。特に会社で上司に説明する際にはよく見られますので注意してください。

×気を遣いすぎる
そうですね。Aさんのプランもよかったですね。資料もわかりやすく、説明も丁寧でしたし。でも、Bさんのプランはよくてですね……。

会議への参加者一人ひとりに気を遣いすぎて、発言しても、結局何が言いたいのかわからない人もいます。後で説明しますが、ビジネスパーソンにとって、ポジションを明確にすることは大事なのです。そうでないと頼りなく思われてしまいます。

×自分の意見とは違うことを言う
私はA案を押していますが、実はA案にはこんな欠点もあって、その分はB案のほうが優れています。その点、A案は心配もあるのですが……、でもそれを覆せる強みもあると思うんです。
×笑いを入れる
この提案ですが、おおむね評判がよくて、うちの大家さんもいいって言ってくれたんですよ。

たまに間違った方がいるのですが、特にプレゼンの場では、笑いはいりません。ビジネスで「おもしろい」のは、ロジックです。相手は、あなたのロジックを聞きにきているのです。たまに静かだからと笑いを入れてうまくまとめる人もいますが、大抵は、しらけて終わりです。

繰り返しますが、まずは「結論」です。データでも感想でもなく、「結論」です。その後、その結論に至る根拠を述べる。これなら大抵1分あれば伝わるでしょう。

伊藤羊一(いとう・よういち)
ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長
株式会社ウェイウェイ代表取締役。東京大学経済学部卒。グロービス・オリジナル・MBAプログラム(GDBA)修了。1990年日本興業銀行入行。プラスマーケティング本部長などを経て、 2015年にヤフーへ。ソフトバンクアカデミアでは孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEOコースで年間1位の成績を収めた経験を持つ。
(写真=iStock.com)
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