「怒られる」「批判される」恐怖を抑えるには

それでは、言い訳をコントロールするのは難しいのでしょうか。例えば、しゃっくりを止めるためには水を飲んだり息を数秒止めたりします。どちらも横隔膜の痙攣を抑えるための努力です。誰も、しゃっくりを「止まれと強く願えば止まる」とは思わないでしょう。言い訳も同じように、生理的な発作を止めるためには、感情ではなく体に働きかけることが大切なのです。といっても、言い訳の発作が出る原因は「怒られる」「批判される」という恐怖にあるわけですから、それを相対化するには、感情をコントロールしなければ無理ではないか、と思われるかもしれません。

その感情を抑制するためにこそ、体に覚えさせることが大事なのです。具体的には、「口癖」を変えることからはじめるのがいいと考えます。ポジティブな口癖を身につけることで、言い訳の発作が起きても、混乱を抑えることができます。例えば、どんな困難な場面でも、「大したことない」「余裕じゃん」といった言葉を口にする癖をつけておけば、焦りの感情や言い訳を抑えることができるのです。つまり、言い訳が言い訳に聞こえるのは、「スムーズに話さなければ」という焦りのせいで、口調がたどたどしくなってしまう、という面があります。わかりやすい不安の表れと言えば「吃音(きつおん)」ですが、これも脳の異常な信号が原因だとわかってきています。

お勧めなのは「余裕じゃん」

仕事の失敗や、隠し事や浮気など自分が罪悪感を抱えているなら、なおさら焦りや恐怖は募ります。そのせいで、言わなくてもいいことまで言ってしまう。「言い訳に聞こえなくするには堂々とすればいい」という理屈は簡単ですが、実際には難しい。根本にある焦り、緊張を解消するためには、ポジティブな口癖を覚えて、体に覚え込ませることが有効です。

口癖は、自分にあった前向きなキーワードであれば、どんな言葉でも構いません。実際に効果が認められていて、お勧めなのは「余裕じゃん」という言葉です。スポーツ選手や芸能人が、本番前の集中のためにルーティンや、ジンクス、まじないを気にするのも、基本的に同じことです。

大嶋信頼
心理カウンセラー
米国・私立アズベリー大学心理学部卒業。『いつも「ダメなほうへいってしまう」クセを治す方法』など著書多数。
(構成=伊藤達也 写真=iStock.com)
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