トラブルがあったときに、どう謝ればいいのか。なかには「あれだけ丁重に謝ったのに許してもらえなかった」と憤る人もいる。それでは謝罪をしても逆効果だ。心理学者のハリエット・レーナー氏は「『ごめんなさい』を取引の材料にしてはいけない」という。同氏の著書『こじれた仲の処方箋』(東洋館出版社)より、相手をイラつかせてしまう「謝り方」に共通する5つのポイントを紹介しよう――。

※本稿は、ハリエット・レーナー(著)、吉井智津(翻訳)『こじれた仲の処方箋』(東洋館出版社)の2章「人をいらつかせる謝り方」を再編集したものです。

【その1】言い訳の畳みかけ

傷ついた側の人は、何をおいてもまず心に響く謝罪の言葉を聞きたいと思っている。そこで、誠意を持って謝罪を伝えたとしても、そのあとにすぐ「でも」と続けてしまうと、せっかくの誠意が帳消しになってしまう。だから、このタチの悪い小さなつけ足しには注意が必要だ。それをしてしまうと、ほぼどんなときでも言い訳に聞こえるか、せっかくの謝罪のメッセージがなかったことにさえなってしまう。

「でも」以下が本当であるかどうかは関係ない。それは本質的に「全体的な状況をふまえれば、私の無礼(あるいは遅刻、嫌みな言い方など)は、そこそこ理解できる範囲のものだ」と言っているのと同じなのだ。

ハリエット・レーナー(著)、吉井智津(翻訳)『こじれた仲の処方箋』(東洋館出版社)

【その2】お気持ちに気づかなかったアピール

「ごめんなさい、あなたがそんなふうに思っていたなんて」という言い方もまた、謝っているようで謝ったことになっていない。真の謝罪とは、自分のしたことから焦点をずらすものではない。ましてや、相手の反応に焦点を移すなどもってのほかだ。

【その3】自分は悪くない可能性を含ませる

これもちょっとしたことだが、“もしも”というのは、相手に自分の反応を振り返らせる言葉だ。「もしも私が無神経なことをしたのなら、ごめんなさい」とか、「もしも私の発言を攻撃的だと思われたのなら、ごめんなさい」などの言い方をついしてしまっていないだろうか。

「もしも……だったら……」と始める謝罪は、だいたいにおいて謝罪になっていない。それを言うなら、「あのときは、言いすぎてしまいました。無神経だったことについてはおわびしますし、二度とこのようなことがないように努めます」という言い方のほうがいい。

「もしも私が……だったのなら、ごめんなさい」という言い方は、相手を見下した印象を与えてしまうこともある。あるチーム・ミーティングでのこと、私のクライアントのひとり、チャールズは、“女脳”についての笑えないジョークを言ってしまったのだそうだ。ミーティングが終わったあとで、チャールズは上司である女性にこんなふうに言った。「もしも私の発言で、ご気分を害されたのならごめんなさい」と。

すると、こんな答えが返ってきた。