社会人をターゲットに「英会話学習」に特化
今、私たちにもっとも身近な情報ツールといえば「スマートフォン」(スマホ)だ。電話としてはもちろん、メッセージのやりとり、写真の撮影、各種の情報収集まで、ネットサービスやアプリを使えば何でもできる。
だがカシオ計算機は2017年11月、電子辞書「EX-Word(エクスワード)」のブランド名を冠した英会話学習機「EX-Word RISE(エクスワードライズ)」の新機種「XDR-S1」を発売した。エクスワードは電子辞書の国内最大手ブランドであり、学生を中心に根強いニーズがある。今回のエクスワードライズはその派生ブランド。社会人をターゲットに、辞書機能を省き、「英会話学習」に特化させたのがウリだという。
誰もがスマホを使う時代に、あえて「専用機」を発売する理由と勝算はどこにあるのか。英会話学習機や電子辞書の開発を担当するCES事業部 商品企画部 第二商品企画室室長の大島淳氏に聞いた。
学生向けの電子辞書は現在も堅調
――カシオ計算機では英会話学習機をどのように位置付けているのでしょうか。
【大島氏】英会話学習機は当社の新事業です。学生には電子辞書、社会人は英会話学習機という位置付けでのチャレンジになります。
――電子辞書の次が「英会話学習機」というのは、かなり大胆なチャレンジですね。
【大島氏】当社が「フルコンテンツ型」と呼ばれる本格的な電子辞書に参入したのは1996年で、メーカーとしては最後発でした。先行する他社と戦うには、何か新しい切り口が必要でした。そこで目をつけたのが学生市場です。当時の電子辞書は万人向けで、特定のユーザーが想定されていなかったのです。学校への地道な営業活動を通じて、少しずつ、先生がたの理解を得られるようになり、2003年からは学校推薦の製品というかたちで当社の電子辞書を導入していただけるようになりました。おかげで、最後発ながらシェアを広げることができました。学生向けの電子辞書は現在も堅調で、中高大のいずれの世代でも売り上げは伸びています。
――少子化でも堅調なのですか?
【大島氏】少子化と言われていますが、学習用の紙の辞書がすべて電子辞書に置き換わっているわけではないので、まだ伸び代があると考えています。スマホを持つ子供さんも増えていますが、できることが多すぎますし、使用禁止という学校もあります。教材として広く使われる段階にはありません。学校現場では引き続き、電子辞書が使われ続けると考えています。