第四カ条
妻からの自立で、つかず離れずいい関係

妻は「老後の命綱」関係性のケアは必須

定年後、一緒に過ごす時間がもっとも増えるのはパートナーだろう。弘兼氏は、現役時代から妻とフィフティーフィフティーの関係になっておくことが重要だと説く。

「対等の関係を保つには、過度に妻に依存せず、自立することが必要です。そういうバランスをつくるきっかけとして、男性はメシを作ったほうがいいですよ。料理が苦手な人は、皿洗い、ゴミ出し、買い出しから始めると、妻から好意的に受け取られるものです」

また、弘兼氏は両者の距離感についても言及する。

「近すぎるのもいけません。お互いの交遊関係に踏み込まないように、妻とは別のコミュニティをつくっておくことが大事です。オススメは介護ボランティアへの参加。いずれ自分もお世話になるかもしれないのですから」

定年後に関係が崩壊した夫婦を数多く見てきた精神科医の保坂氏も、妻からの自立を説く。

「『夫は会社を辞めてから、ずーっと家にいて、一日3度ご飯が出てくるのを待ってるだけ。だから私が外に出て逃げるしかない』と話す妻は多いです。定年退職した日に、妻から『私も今日で定年退職です』と言われて捨てられた夫もいます。危険なのは、子どもがかすがい化している家庭。今の円満な家庭関係が子ども頼りだとすれば、奥さんとの関係を考え直さなければなりません」

すでに夫婦関係が冷え切っている場合どうすればよいのか。佐々木氏は、妻への呼び方ひとつで、その関係性を変えられると話す。

「会社がタテ社会だとしても、家族はヨコ社会と考えましょう。妻や娘、母親に対しても、ヨコの目線で接するんです。まずは相手のことを“さん付け”で呼んでみてください」(佐々木氏)

亭主関白な考え方は捨て、妻への敬意を形にして伝えることが、楽しい定年を迎えるための必須条件のようだ。

60歳以降の人生を考えて、憂鬱な気分になった読者もいるかもしれない。そんな不安を抱える後輩たちに弘兼氏はこんな言葉を送る。

「これまでの話と矛盾するかもしれませんが、細かすぎる人生プランは立てないほうがよいです。外れたときに修正するのにストレスがかかりますから。人に迷惑をかけなければいい加減に生きたほうがいい。なるようになる。それくらいの心持ちでいてください」

妻と良好な関係を保つための3つの秘訣
▼家事は半分ずつ
妻は夫の三食の世話を煩わしく思うもの。料理ができない場合は、皿洗い、ゴミ出し、買い出しから始めたい。
▼妻とは別のコミュニティを持つ
「今まで苦労をかけた分、定年後は行動をともに」という発想は危険。妻には妻の友人関係があるため、立ち入らないこと。
▼呼び捨てNG
名前の呼び捨ては「いつまでも偉そうにしている」と受け取られるため、“さん付け”に変える。「おい!」「おまえ」などと呼びかけるのはもってのほか。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)
漫画家
1947年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)勤務を経て、漫画家デビュー。代表作『課長島耕作』『黄昏流星群』をはじめ、著書多数。2007年紫綬褒章受章。
 

佐々木常夫(ささき・つねお)
佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表
1969年東京大学経済学部卒業後、東レ入社。自閉症の長男と肝臓病とうつ病を患う妻の看病をしながら仕事に取り組む。2001年取締役。03年東レ経営研究所社長。10年より現職。
 

保坂 隆(ほさか・たかし)
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長
精神科医。1977年慶應義塾大学医学部卒業。2003年東海大学医学部精神科学教授。17年聖路加国際病院精神腫瘍科部長・リエゾンセンター長を定年退職後、現職。