第一カ条
モノは生ゴミとともに捨てる覚悟で

家にある本や写真は、本当に必要か?

では定年を迎えるにあたり、具体的な行動として今すぐできることは何だろうか。

PIXTA=写真

「まずはモノを捨てること」と語るのは、東レの元取締役で、現在は経営者育成プログラムの講師などを務める佐々木常夫氏だ。

「ビジネスパーソンが着手しやすいモノといえば本でしょう。勉強熱心な人ほど、たくさん所有しているものです。私の趣味は読書ですが、自宅の本棚は1000冊以内と決め、それ以上増えたら捨てることにしています。引っ越しも楽になります」

本と同様の紙モノとして、意外とかさばるのが写真だ。佐々木氏は、絶対に必要な写真を厳選したうえで、デジタルデータ化して保存している。パソコン1台にすべての写真のデータが入っているため、持ち運びも簡単だ。一方、弘兼氏は、データも含めて自分の写真を全く残していない。スキャニングなど、保存するために使う時間を、ほかのことに回したいという考えによるものだ。方法は違うが両者に共通するのは「形がある紙の写真は残さない」という点。捨てる習慣を身に付けるために取り入れたい考え方だ。

本、写真以外には何を捨てればよいのだろうか。

「クローゼットの服を見直してみてください。サイズが合わなくなっている服は、元の自分に戻れる自信がある方を除いて、即捨てましょう。古着屋に持っていっても、10円になるかならないか。捨てるほうがラクです」(弘兼氏)

ここで、弘兼氏が思い入れのある服を捨てるコツを教えてくれた。

「捨てるときは、生ゴミを入れているゴミ袋に入れること。もう取り出す気にはならなくなりますから。こうして、僕は新しい服を1着買ったら、必ずその分1着は捨てるようにしています」

保坂氏も、「クローゼットを片付けると、スッキリして万事回転がよくなる」と同意するが、そのときの心持ちがとても重要だと説く。

「人に無理やり捨てさせられるのと、自分で捨てるのとでは、全然違います。精神的にも自分で捨てたほうがいい。でも、おしゃれをする気持ちは、一緒に捨ててはいけません。無理に高いものは買わなくてもいい。ちょっとかっこいいサングラスをいつも持っているなど、一点豪華主義がオススメです。これは収入が減る定年後にも使えるテクニックです」

なぜ、モノを捨てるのはかくも難しいのか。理由のひとつとして、弘兼氏は処分費の存在を挙げる。

「昔のステレオや使わなくなったテレビなどを、家の中にためこんでいる人がいます。しかし、廃棄にもお金がかかる時代であると覚悟して、捨てないといけません。自分が捨てなくても、いずれ誰かが捨てなければならないからです」

弘兼氏は使わない古い家電と併せて、レーザーディスクやレコードなどのソフト類も処分したと話す。その他、引き出物や頂き物などの死蔵品も要チェックだ。未開封でももったいないと思わずに、使ったほうがいい。自分の手元にやってきたモノには、人生を楽しく彩る力があるからだ。そのうえで、役目を終えたモノを見極め、手放すのが“捨てる習慣”の基本といえそうだ。

▼定年前から見直し開始! ビジネスマンが捨てるべき5大アイテム
1:本
流通構造が変わり、以前より再入手もしやすくなった。ためらわずに手放そう。
2:写真
データ化する場合は、厳選してから着手を。保存にかかる労力と時間は有限だ。
3:服
「高かったのに」「やせたら着られる」はNG。今の体形と見比べてシビアに吟味を。
4:賞状、成績表
過去の努力は、自分の中に蓄積されている。「証明書」は不要と考えよう。
5:年賀状、名刺
人脈を感じるための自己満足ツールになってはいないか。連絡に使わないなら処分を。