第二カ条
肩書へのこだわりは百害あって一利なし

できる男ほど、過去の栄光を捨てられる

使わないとわかっていても、捨てるのに躊躇するのが「思い出の品」だ。

「昔100点を取ったテストの答案や、図画コンクールで優勝した絵などを、お袋がずっと大切に保管してくれていました。しかし、お袋の目が届かなくなったタイミングで、自分で全部捨てました。僕はまだまだ前を向いて仕事をしたい。今の僕には、昔の自分の思い出に浸る時間はないんです」(弘兼氏)

弘兼氏は、過去に自分が出演したテレビ番組を録画したビデオテープを全部処分したという。今は録画すらしない。思い出の品への執着を捨てるということは、日々をポジティブに過ごすことにつながるのだ。

形あるものに限った話ではない。

「定年を迎えても過去の肩書にしがみついていると、いろんなところで妨げとなります。たとえば、マンションの管理組合。昔高い地位にあった人が集まりがちですが、偉そうに振る舞う人がいると、雰囲気が悪くなり話も進まない。1度会社を辞めたら、過去の立場は忘れなければなりません。一からスタートするという気持ちで、未来を見なければ前に進めませんし、自分も周囲も楽しくなくなってしまいます」(弘兼氏)

さらに弘兼氏は、会社員時代に同期だったある友人の話をしてくれた。

「漫画『島耕作』のモデルにもなった友人は出世して要職に就き、63歳で一線を退きましたが、過去の肩書などを全くひけらかさないタイプです。『オレは偉かった』というようなつまらないプライドは持っていません。時々お会いする機会のある元総理大臣の小泉純一郎さんも、そのようなプライドは感じさせません。肩書は過去のものとしてこだわっておられないんでしょうね」

サラリーマン生活が長かった佐々木氏曰く、多くの人が執着しがちなのは、やはり仕事に関わる「思い出」たちだ。

「会社やゴルフでもらった賞状は、持っていても意味がない。自己満足でしかありません。大事なのは、今のあなたがどんな人格かだけ」(佐々木氏)