最近特に深刻なのが、首のヘルニア患者の増加だという。「昔は椎間板ヘルニアといえば圧倒的に腰だったのが、20年ほど前から逆転し、今では9割程度が首で来院する」と三井氏は話す。

首の骨は、頸椎と呼ばれる7つの骨からできていて、頸椎と頸椎の間には、クッションの役割をしている椎間板という軟骨がある。さらに頸椎の後ろにも、椎間関節という軟骨がある。下を向いたときの負荷がこの軟骨にかかり続けると、すり減って変形してしまう。変形した軟骨が神経に当たって痛みやしびれを起こすのが椎間板ヘルニアだ。「自分では気付いていない人が多いが、今の30代から50代のうち、8~9割の人は首のヘルニアか、ヘルニア予備軍ではないか」。

軟骨は1度すり減ると再生しない。「骨や筋肉は鍛えることができるし、再生もするが、椎間板などの軟骨だとそうはいかない」。

首のヘルニアの症状は、突然出る。「半数ほどは朝起きたときに突然出ます。ほかは、くしゃみ、スポーツなど、きっかけはさまざまです。痛みやしびれは、首ではなく、首を通る神経がつながっている頭の後ろ、肩甲骨、肩や背中、腕などに、左右偏って出ることが多い。首だけが痛い人は、寝違いや捻挫、筋肉痛などで済む可能性が高い」。

すぐに気付いて整形外科に行けばよいが、首のヘルニアだと気付かず、不用意にマッサージや整体、カイロプラクティックなどで施術を受けると、患部に刺激を与えることになり、余計に症状が悪化する可能性もあるという。

治療には、首を牽引するなどのリハビリや薬の投与などがある。手術は、下肢のしびれや麻痺を伴うなど重度の場合に限られる。そこでも一番重要なのは姿勢だと三井氏は言う。「首のヘルニアは、パソコンを長時間使う生活で起きる生活習慣病なので、日々の習慣を変える必要があります」。首だけを動かさず、振り向くときは体全体で振り向く。床のものを拾うときにもゆっくりと、体全体でしゃがむ。首を意識的に動かすのはよいが、無自覚な首の動かし方には危険が潜んでいる。