加齢が引き起こす体の不調。放置していれば、取り返しのつかない事態を招くこともある。「プレジデント」(2018年1月1日号)より、9つの部位別に、名医による万全の予防策を紹介しよう。第2回のテーマは「目」――。

他人事ではない「白内障」「緑内障」「糖尿病性網膜症」

毎日のように手術に立ちあい、多くの患者と接してきた私の感覚では、目の寿命は65~70年です。平均寿命が延びたいま、自分のためにも家族のためにも、失明する前に手術なり処置が必要です。

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最終的に失明の危険性もはらんでいる目の疾患で患者数が多いものに、「白内障」「緑内障」「糖尿病性網膜症」「加齢黄斑(おうはん)変性」「網膜剥離」などがあります。いずれの疾患も、片目ずつものを見たり、視力を測ることが少ないため、自分の片目だけに起こると、病気に気づかないことが多いのです。

「白内障」は加齢により目のなかの水晶体が濁る疾患です。患者数は年齢とともに増加しますが、眼科で「手術はもう少し後でいい」といわれることが多々あります。日本は手術を先延ばしにする傾向にありますが、30~40代でも薄く濁っている方もいます。白内障の視力検査をして、視力が落ちて不自由を感じたら手術適用、というのが世界の標準です。放っておくと水晶体が成長して大きくなり、隅角が狭くなり緑内障を起こすことがあるので、早めの白内障手術が世界的傾向です。

「緑内障」は日本人の失明原因第1位の疾患です。目から入ってきた情報を脳へ伝達する視神経が障害されて視野が狭くなります。

この緑内障と僅差で、日本で2番目に多い疾患が「糖尿病性網膜症」です。食後の血糖値とインシュリン分泌後の低血糖値の差が大きいほど悪化し、眼底出血や硝子体出血を繰り返し、網膜剥離で失明することがあります。

欧米の中途失明原因の第1位といわれているのが「加齢黄斑変性」で、日本でも患者数が急増しています。網膜の中心部にドルーゼンという老廃物が溜まって視力が落ち、新生血管や黄斑浮腫などでものが歪んで見えたりします。

「こうした病気の多くは高齢者に多いから、まだ自分には関係がない」と思う読者もいるかもしれません。しかし若年者でも網膜剥離になり、白内障になる方も増えています。

「網膜剥離」というと、目に大きな衝撃を負ったボクサーに多そうなイメージを持つかもしれませんが、アトピーや花粉症などで、無防備に目をかいたり、かゆすぎて叩いたりした結果、網膜がはがれてしまうケースも多いのです。