国難と呼ばれる時代には絶対に必要な政治家

【塩田】「第8章 地方自治」の全面改正が入らない発議案でも認める姿勢ですか。

【馬場】議論することが大事で、憲法審査会の多数決で、第1段階で「地方自治」の改憲案が敗れれば、それはいたし方ないと思います。

【塩田】安倍首相や自民党が最重視しているのは第9条への自衛隊の明記です。

【馬場】うちも9条の改正自体を否定するわけではないんですが、第3項を追加するとか、第2項だけを削除するとか、改正のいろいろなテクニック的な部分については、まだまとめ切れているわけではありません。ただ、北朝鮮情勢を見ても、自衛隊が違憲であるというような議論が起こることは、もう封印すべきと個人的に思います。

【塩田】各党の対応を見ていると、結局、各党が容認して発議の議決ができそうな改憲案は、基本的人権の制限を認めない緊急事態条項の新設だけではないかという気がします。

【馬場】それだったら、やらんほうがましですね(笑)。

【塩田】現在の北朝鮮情勢をどう見ていますか。

【馬場】対話と圧力という政府の手法は正しいのでは。今は圧力をかけるときでしょう。

【塩田】アメリカでトランプ大統領が登場して1年が経過しました。

【馬場】ビジネスマンですから、奇想天外なことをしますけど、僕は新しい世界秩序をつくっていくために一回、こういう時期が大事と思いますね。外交はけんかですよ。そんな上品なものとは違うからね。けんかするにはいろいろなことを想定し、武器を身に付け、仲間をつくって、手練手管で考えていかないと。そういう時代が来ていますよ。

【塩田】最後に橋下氏と現在の維新の関係、さらに橋下氏の政界復帰について、お尋ねします。17年の総選挙での維新の議席減も、「橋下不在」が原因だったのでは。

【馬場】それは一つの要因だったことは間違いないでしょうね。

僕は去年3月、橋下さんと一緒にワシントンに行った。橋下さんがCSIS(アメリカ戦略国際問題研究所)が主催する会で講演したんですが、十数人の上下両院議員のところも一緒に回りました。そういう姿を見ていると、政治に対する興味はまったく衰えていない。日本が国難と呼ばれる時代には、絶対、必要な政治家です。近いうちの復帰を願っています。この5年で徐々にその土俵ができてきていると思います。

橋下さんは、人間的な部分でも政治家としても安倍さんへの信頼度が高い。基本は安倍さんが頑張っている間は任せておいたらいい、という考え方と思うんです。彼が登場するのは、安倍さんが影響力をなくして今よりもさらに深い国難が迫ったときです。

【塩田】現在の日本維新の会を、橋下氏はどう思っているのでしょう。

【馬場】「頼りないやっちゃな」と思っているでしょうね。今の自民党は、安倍さんがいなくなった後も、こういうメンバーが内閣を担うのではと想像できると思うんです。民進党もそうですが、わが党もそれができない。国民から見て、あの人が首相でという顔ぶれが浮かぶ政党になったとき、初めて政権政党という立場になれるのでは、と思いますね。

【塩田】橋下氏自身に、政治をやらないという個人的な事情があるのですか。

【馬場】ないでしょう。あるとすれば、「大阪都構想で負ければ政治家を引退する」と言ったその言葉しかないでしょう。

【塩田】橋下氏と付き合いがある前原氏はインタビューに答えて、7人の子どもがいる橋下氏の「経済的事情」を口にしていましたが。

【馬場】でも、引退してから、相当、稼いだん違いますか。

【塩田】政治の現場に戻る場合は、国政選挙にいきなり出てくることになりますか。

【馬場】そうなるでしょうね。その点でも、今年の大阪都構想の住民投票は大きな意味を持っていますね。都構想が成立すれば、それ以降の国政選挙にという可能性が出てくる。

【塩田】仮に来年の夏、憲法改正の国民投票と参院選が同日選という展開になると、もしかすると衆議院総選挙もぶつけて、衆参同日選になるかもしれない。

【馬場】その可能性もあるでしょうね。そうなると、投票用紙の枚数は6枚か(笑)。

馬場伸幸(ばば・のぶゆき)
日本維新の会幹事長・衆議院議員
1965年1月27日、大阪府堺市生まれ(現在、52歳)。大阪府立鳳高卒。高校卒業後、3年間、オージーロイヤル(現ロイヤルホスト)でコックを勤め、86年から中山太郎(当時は参議院議員。後に衆議院議員。元外相)の秘書となる。93年に堺市議補選で初当選(自民党)。12年まで6期在任し、11~12年に堺市議会議長。12年12月の総選挙に日本維新の会公認で大阪17区から出馬し、初当選(現在、当選3回)。14年12月から15年9月まで維新の党国会対策委員長、15年12月からおおさか維新の会幹事長となり、日本維新の会に衣替えした後も幹事長に留任。
(撮影=尾崎三朗)
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