今までにない政治、既得権の破壊を愚直に訴え続ける

【塩田】今年の安倍政権と安倍首相について、どう見ていますか。

【馬場】9月に自民党の総裁選があります。今の安倍政権は、外交とかアベノミクスを見ても、よくやっていると思います。よほどのことがない限り、安倍さんの3選は強いと思いますが、3選されると、逆にその後は、3年後までとか、ゴールが見えてきます。そこで自民党の中がどう変化していくのか、きっちりと見ていきたい。

【塩田】維新は総選挙で落ち込んで、ベンチャー政党ではない「裸の維新」から、今後、どうやって党の再生・新生に挑戦しますか。

【馬場】安倍政権は及第点に近いので、国政では自民党ができない新しい安心できる社会保障改革や規制緩和、成長産業の後押しにもっと力を入れていく。今までにない政治、既得権の破壊を愚直に訴え続ける。

来年、消費税率が上がると、国民負担率は50%を超えると思う。そうなると、賃金が上がっても自由に使えるお金は増えないという状況になります。国民の側の立場に立って、行財政改革で「小さな政府」にして国民負担率を下げる。それしかないと思うんです。

【塩田】維新は結党以来、「身を切る改革」を唱え続けています。大阪では数々の改革に取り組んできましたが、国政では「身を切る改革」で何を訴えていきますか。

【馬場】われわれはすでに国会議員の報酬の2割カットを実行しています。金額でいうと、月額1人18万円です。維新は法案を出していますが、まったく相手にされていません。

実は東北大震災の後、復興財源として国会議員が報酬を2割カットし、大企業にも特別の税金を、国民にも特別の増税をお願いした。いつのまにか企業も国会議員も終わり、国民だけが2037年まで負担することになっています。これはやる順番が違うという思いを込めて、国会議員の2割カットも国民の特別な増税が終わるまで必ずやり続けるべきです。

国民のみなさんにぜひ監視してもらわなければと思うのは、みなさんが気づかぬ間に、自民党を筆頭に、最近も議員年金の復活を目指している。年金がないから議員のなり手がいないとか、ばかっぽい理屈を言うんです。なり手がなければ、定数を減らしたらいい。

【塩田】ずっと実現を目指して訴え続けている大阪都構想には、今年、どんな挑戦を。

【馬場】大阪都構想は維新の原点です。大阪では今年の秋、もう一度、住民投票を実施する段取りで進んでいます。めどはついてきていると思います。住民投票の実施は協議会での多数決で決まりますが、他党の協力が得られるかどうかが最大のポイントですね。

【塩田】前回の15年の住民投票は惜敗でした。「二の舞い」阻止には何が必要ですか。

【馬場】前回は反対陣営のネガティブキャンペーンで、水道料金が上がるとか市営住宅の家賃が上がるとか、なんの確証もない、デマに近い運動が展開された。その経験を生かして、大阪市民のみなさんにどんなメリットがあるか、きちんと伝える。そうすれば大阪都構想への理解が広がると思う。これは統治機構改革です。大阪府と大阪市の行政を一本化して、すぐに市民生活に具体的な変化が起こるかといえば、そうではない。好循環が始まるだけで、変化は起きないけど、そこをどう理解してもらうかが難しいところですね。

【塩田】国会では、今年前半から憲法改正をめぐる議論や協議が本格化しそうです。維新は国会で憲法問題にどういう姿勢で臨むのですか。

【馬場】首相が安倍さんであろうが、違う人であろうが、国民の立場に立ち、今の憲法は時代に即して変えるべき項目を変える。それが基本的な考え方です。遅きに失しているぐらいです。どんどんやらないとだめです。

【塩田】維新は16年3月に独自の改憲案を発表し、憲法「第8章 地方自治」の全面改正を含む統治機構改革、全教育の無償化、憲法裁判所新設などを打ち出しました。一方、自民党は17年の総選挙の公約で、第9条への自衛隊明記、緊急事態条項の新設、参議院の選挙区の2県合区の解消、教育の無償化を掲げました。同じ改憲推進の立場でも、教育の無償化を別にすると、目指す改憲の中身がかなり違っているように見えます。

【馬場】憲法改正を最後に決めるのは国民です。一般の法律と違って、憲法改正だけは、国会は国民のみなさんに改正項目という材料を提示する役割です。改正項目の絞り込みをやるという意味では、北朝鮮を始めとするアジアの緊張状態や、中近東など各地の紛争を考えると、確かに9条改正はぼちぼち真剣に議論する時期が来ていると思うんです。

教育の無償化は、経済的に恵まれない子どもたちの教育を受ける機会を保障し、子育て世代をサポートし可処分所得を増やせば、経済にいい影響を与えるし、学力を修めた子どもたちに将来、高額の納税者になってもらえる。国民の側から見て「そうやな」と言ってもらえると思うんです。ですが、合区解消は「何をばからしいこと、言うてるんや」という話です。自民党議員は「都道府県から1人、参議院議員という代表者がいないと、国政に声が伝わらない」と言う。「それやったら、何のために衆議院議員や知事がいるんですか」と聞いたら、ぐうの音も出ませんでしたわ。国民は絶対、受け入れません。

今年の通常国会で衆参の憲法審査会を招集し、3カ月から半年かけて各党で改正項目を絞り込んで、それを出し合って議論する。その議論を国民のみなさんに見てもらう。時間はたっぷりとったほうがいいと思う。1年くらいは必要でしょう。今年1年かけて議論して、改憲案を発議し、国民投票は国政選挙と一緒にやるべきだという意見が割りと多い。来年夏の参院選と同日選という可能性は、僕は「なきにしもあらずや」と思いますね。