両者間の健全な競争を阻んでしまう
労働者のモチベーションを下げる点でも問題だ。非正規社員はどんなに頑張っても、正社員とは最初から区別されており、「決められたことを淡々とこなせばいい」という気持ちになる。一方、正社員は既得権益で守られる。その結果、両者間での健全な競争を阻んでしまい、会社全体の生産性は一向に上がらない。
日々、千差万別な業務が繰り広げられているなかで、その定義付けをすることは現実的ではない。それをいくつかの具体例で、無理やり示そうとしていることに問題の根源がある。そこで私が提案したいのは、同じ職場における成果と賃金を一致させる「同一労働成果同一賃金」だ。非正規社員でも正社員と同じ成果をあげたら、同じ金額の賃金を払う。これにより職場内に競争が生まれ、自ずと生産性がアップしていく。
事務などの間接部門は定量評価が難しいという声も出るだろう。しかし、定性評価であっても、その数を積み重ねることで皆が納得する評価が可能なことを、私は長年にわたる人事畑での経験で知っている。働き方改革の灯火を消すことなく、日本企業全体の生産性向上につなげていきたい。
(構成=田之上 信 撮影=小田駿一)