3強を追う、駒澤大、中央学大、東洋大

ここまでに挙げた3チームに食らいつかんとするのが駒澤大学と中央学院大学、少し離れて東洋大学だろう。いずれのチームも総合力は高いが、前述した3つのポイント区間の内、駒澤大と東洋大は5区、中央学大は2区がキーになる。駒澤大には、学生の世界大会であるユニバーシアードにおいてハーフマラソンで1、2位を占めた片西景、工藤有生の2枚看板がいる。区間エントリー時点では片西が1区、工藤が7区。往路、復路それぞれに支柱を配す布陣だが、5区は経験者が卒業したため、未知数だ。

青学大の4連覇か、東海大の初優勝か、神奈川大の20年ぶりの優勝か。

中央学大は1区に大森澪、5区に細谷恭平と経験者を擁し、2人は今季も堅調な仕上がりを見せているが、2区の爆発力が課題。東洋大は実力派ルーキーの西山和弥が1区、全日本大学駅伝の1区で区間賞を獲得した相澤晃が2区に入った。前回大会2区で堅走したキーパーソン、山本修二の区間配置次第では往路優勝争いを展開する可能性もある。ただし、前回復路で堅実に走った3人の選手がメンバーから漏れた。東洋大が総合力で“少し離れる”要因はここにある。

以上の6校が今大会の上位候補。3強に、駒澤大、中央学大、東洋大が挑む。そんな構図で捉えることができそうだ。ポイント区間を終えて各校がどの位置にいるのかを把握しつつ観戦すれば、より熱が入るのではないだろうか。

ここまで上位争いについて見てきたが、勝負の行方を占う上で、もうひとつポイントがある。それは“レースの流れを追う”ということだ。前回の箱根駅伝終了後、流れにうまく乗ったチームと、乗れなかったチームの違いについて書いた(青学大圧勝!箱根駅伝の明暗を分けた「もう一つの要因」:http://president.jp/articles/-/21079)。“レースの流れ”というあいまいな表現に対する解釈として、流れを生み出す要素に「エースランナーの走り」「各区間に点在する要所での粘り」を挙げた。ここでは後者について再度触れておきたい。各区間における要所とは以下の5つと仮定する。これまで往路に絞って話を進めてきたが、レースの流れを左右し得るポイントはその他の区間にも存在している。

●2区:権太坂~戸塚中継所に至るまでの急登
●4区:小田原中継所に至るまでの終盤。距離変更に伴い、前々回大会まで5区の一部であった細かいアップダウンが待ちうける
●5区:小涌園~芦ノ湖まで。終盤に差し掛かり、箱根の山を登坂する選手の地力が試される
●6区:函嶺洞門~小田原中継所に至るまで。山を駆け下ってきた選手を待ちうける約3kmの平地。登りにも感じられ、ペースダウンを誘う
●8区:茅ヶ崎~遊行寺に至る約9km。15.6km過ぎの遊行寺坂が最大の難所。この頃から気温も上昇傾向となり、ペースダウンの一因にもなり得る

前回大会は、上記のポイントを着実に走りきった神奈川大と順天堂大が最終的に総合上位(4、5位)に食い込み、他方で、下馬評に反して苦戦した駒澤大と東海大は、エースランナーの失速に加え、いずれかにおける取りこぼしが9位、10位という結果となって表れた。上記区間を含む通過情報は、定点計測の速報としてインターネット上で把握することができる。優勝争いだけではなく、同じく混戦が予想されるシード権争いにおいても、ひとつの指標となりそうだ。

青学大の4連覇か、東海大の初優勝か、神奈川大が20年ぶりの戴冠なるか。あるいは、伏兵の駒澤大、中央学大、東洋大が3強を食うか――。

第94回箱根駅伝、まもなく号砲である。

(写真=吉田直人)
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