やたらと「やっぱり」を言うのは、やっぱりよくない

一方、私自身は、自分からすすんで若手に作法を説くようなことは、ほぼやらない。しかし、ここ5年ほどの間で一度だけ、ある若者に「作法」を教えたことがある。その若者はライターなのだが、インタビュー中「やっぱり」を冒頭につける質問を連続させた。

「やっぱり山田さんは、このイベントは若い人に向けて『絆』の強化を狙ったんですか?」
「やっぱり来場者は男性ばかりだったんですか?」
「やっぱりこのイベントが終わった後、山田さんは達成感がとんでもなくあったんですか?」

こんな調子だ。私は彼にこう言った。

「口癖なのかもしれないが、質問にやたらと『やっぱり』を付けてしまうと、相手は『こいつ、何でも結論ありきで聞いてやがるな』と思ってしまう」
「嵐の櫻井翔がニュース番組のキャスターをやっているが、彼もかつて、スポーツ選手に対して話を聞いているとき『やっぱり』を多用していたことがあった。オレはそれを見て『選手に対する敬意が足りない』と思ったんだよね」
「あくまでもオレたちは聞き手なので、しゃべってくれる人の地の声をいかに引き出すか、を軸に考えたほうがいい。だから『やっぱり』を連発する癖は早くなおすほうがいい」

なんとなくエラソーではあるものの、数年間に1回ぐらい、この程度のことはやっぱり言ってもいいかもしれない。

【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・先輩が教えてくれる「ビジネス作法」。いまはウザくても、後々役立つことが多いので、真面目に耳を傾け、ちゃんと実践したほうがいい。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。
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